『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』予告動画
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』作品情報
2013年イギリス/アメリカ映画(原題:About Time)。
『ラブ・アクチュアリー』のリチャード・カーティス監督・脚本によるタイムトラベルを題材にしたSF恋愛ファンタジー。キャスト:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、トム・ホランダー、リンゼイ・ダンカン、リディア・ウィルソン、マーゴット・ロビー。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』あらすじ
舞台はイギリスのコーンウォール。オレンジ髪の冴えない青年ティムは21歳になった時、父親から一族に伝わる秘密を告げられる。それは時間を遡ることが出来るタイムトラベル能力があること。半信半疑のティムは試しに大晦日の晩に戻りパーティーをやり直す。驚くべき能力を身に着け興奮したティムは、今度は彼女を作るためタイムトラベルを繰り返すのだが…。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』感想評価
前半に感想と評価、それ以降は物語の解説をしていきます。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』はタイムトラベルの能力を持つ青年が、恋と家族のために奔走する姿を描くSF恋愛ファンタジー映画です。
原題は『アバウト・タイム』なんですが、邦題は『愛おしい時間について』と余計な言葉を入れちゃってます。シンプルに『アバウト・タイム』でいいのに、何故言葉を付け足したのかは不明です。
主演に『レヴェナント:蘇えりし者』のドーナル・グリーソン、共演に『スポットライト』のレイチェル・マクアダムス他、ビル・ナイやリンゼイ・ダンカンといったベテラン勢が脇を固め、特にビル・ナイが渋く哀愁のある父親役を見事に演じています。彼のような父親を欲しいと誰しも思うはず。
監督のリチャード・カーティスは『ラブ・アクチュアリー』をはじめ監督作は少ないですが、『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ノッティングヒルの恋人』の脚本家として名を馳せる人物。ロマンティックコメディが得意で、イギリスらしさとアメリカ的なノリを融合させたような、軽快な中にも深い味わいがある作風が特徴です。
海岸の穏やかな風景が印象的な主人公の出身地コーンウォールは、イギリスの南西端にあります。イギリスの中でも独特な文化や言語を持つ地域で、あののんびりとした景観を「良いなあ」と思った人も多いんじゃないでしょうか。バカンスで行きたいですよね。
ちなみに、ラストで父親と海岸を歩く少年時代のティムを演じたのは、リチャード・カーティス監督の実の息子さんです。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』を以前に初観賞したとき、なんだただの『バタフライ・エフェクト』のパクリじゃん!って思いました。しかし時間を経て再び観賞し、こんなに素敵な映画だったんだ!という考えに変わりました。
面白いと思った映画を時間を経て再鑑賞した際、そうでもないなと思うことは度々あるのですが、この映画のように面白くないと思ったものが、面白い評価に変わったのは初めてです。まさに「時間について」というタイトルにふさわしい、時間が経つほど味わいが出てくる映画なのかもしれません。
もう一度言いますが『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』は素敵な映画です。何がステキかと言うと、それは、この映画は「日々を感謝すること」に溢れているからです。タイムトラベルは単に、日々への感謝を引き立たせる為の素材に過ぎません。
ティムが秘訣を得たように、幸せな一日だったか、不幸だったか、一日をどう感じるかはその人次第。人生の旨味も苦みも十分経験したであろう監督だからこそ、このような映画を作れたんじゃないかと思います。
さてここからは、そんな時間への感謝に溢れた映画『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』のストーリーを解説しながら、挿入曲の紹介もしていきたいと思います(ネタバレ)。
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ネタバレ解説
オープニング
イギリスのコーンウォール地方に住む青年ティム・レイク(ドーナル・グリーソン)は、一風変わった家族と共に穏やかな日々を過ごしていた。
読書と卓球好きな父(ビル・ナイ)、我が道を行く母(リンゼイ・ダンカン)、ボケてる叔父デズモンド(リチャード・コーデリー)、自然体の妹キットカット(リディア・ウィルソン)。
タイムトラベル
21歳になったティムは父の口から、一族に伝わるタイムトラベル能力の存在を知らされる。タイムトラベルで行けるのは自分の過去だけ。未来には行けない。
ティムは試しに大晦日の晩に遡り、失敗したパーティーでの振る舞いを成功させる。金のためにパワーを使えば破滅すると父から忠告を受けたティムは、彼女を作るために使うと言う。まあ、まず初めに男が考えるのは絶対それでしょう笑。
その夏、夏休みをティム家で過ごすために来たキットカットの友達シャーロット(マーゴット・ロビー)と出会う。
ティムはシャーロットに一目惚れし、タイムトラベル能力を使う絶好の機会にする。しかし、ティムは能力を使ってもシャーロットの好意を得ることが出来ずに夏は終わる。
ロンドンでの生活
ティムは弁護士の仕事を始めるためロンドンへ上京。父の脚本家仲間であるハリー(トム・ホランダー)の家に住む。ハリーは人間嫌いのクレイジーな人だった。
ロンドンでの新しい出会いに期待していたティムだが、女性と知り合う機会もなく同僚のローリーとばかりつるむ日々。
そんなある日、ジェイの誘いで暗闇レストランに行ったティムは、メアリー(レイチェル・マクアダムス)と出会う。
レストランの外での会話時に流れる曲は「Mid Air」ポール・ブキャナン。
メアリーと意気投合し連絡先を教え合ったティムだが、帰宅すると、舞台の初演が失敗に終わったハリーは落ち込んでいた。ティムはハリーの為にタイムトラベルを使い、舞台を成功へと導く。
しかしメアリーとの出会いがなくなったので、彼女の連絡先は消えていた。どうしようと考えたティムは、彼女がケイト・モスのファンであることを思い出し、ケイト・モスの展示会に行ってメアリーが現れるのを待つ。完全にストーカーですね笑。
展示会で待っている時に流れる曲は「Friday I’m In Love」ザ・キュアー。
ようやくメアリーと再会するティムだが、メアリーに彼氏が居た為、メアリーと彼氏が出会う前まで遡って、ちゃっかり横取り。そしてメアリーとの仲を深め、二人は同棲することになる。
地下鉄のシーンで流れる曲は「How long will I love you」ジョン・ボデン他。
メアリーの両親への挨拶も済ませたある日、舞台を観に行ったティムは初恋の人シャーロットと再会する。久しぶりの再会に盛り上がり、シャーロットの部屋へと誘われるティムだが誘いを断る。
そして急いで家に戻り、メアリーにプロポーズするのだった。
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結婚
結婚式は強風の中で行われ、みんなずぶ濡れでしっちゃかめっちゃか。でも想い出深いものとなった。人生にも色んな天気があるのだから。
結婚式で流れる曲は「イル・モンド」ジミー・フォンタナ。
娘も生まれ幸せな日々を送るティムは、タイムトラベルを使わなくなった。
そんなティムとは対照的に、妹のキットカットは彼氏のジミーと上手く行かず、酔って車の事故を起こす。妹の人生を心配するティムは、キットカットにタイムトラベル能力の秘密を打ち明け、人生をやり直させる。
しかし歴史が変わったため、ティムの赤ん坊は別人になっていた。仕方なくキットカットの事故後に戻り、友人のジェイを妹に紹介することにした。その後ジェイとの仲を育み、キットカットの人生も落ち着きを取り戻す。
父の死
ティムとメアリーには二人目の子供が生まれ、全ては順調に行くかと思われたが、今度は父が末期ガンで余命が短いことを知る。
悲しみに暮れるティムに父は、幸せになる秘訣を教えてくれた。それは、毎日を同じようにもう1回繰り返すこと。初めは緊張や不安で気づかなかった人生の素晴らしさに、2回目は気づくのだ。
父の葬式でかかる曲は「Into My Arms」ニック・ケイヴ。
父が逝った後もティムは父の生前に戻り、卓球を一緒にプレイしていた。しかし3人目の赤ちゃんが出来たことにより、もう二度と生前の父に会うことが出来なくなる。
二人は最後の想い出として、海辺の散歩を楽しむのだった。
父の最後の願いが、息子と海岸を散歩するという平凡さに、この映画のテーマが凝縮されている。
ラスト結末
父の死から月日が経ち、キットカットにも子供が生まれ、レイク家には穏やかな日々が流れていた。
そんな中、ティムはタイムトラベルの最後の秘訣を悟っていた。それは、タイムトラベルを使わず、今日を人生最後の日だと思って楽しんで過ごすこと。
「今を精一杯生きて、素晴らしい日々を噛みしめよう」。
ラストでかかる素敵な曲は「The Luckiest」ベン・フォールズ。
まとめ
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』の素晴らしいところは、タイムトラベルを大袈裟に扱わない事。日常の中に取り入れて、幸せを模索する普通の人々の話に仕上げています。
ティムは能力を使って幸せを追求しましたが、上手く行くこともあるし、行かないこともあった。父も言ったように、タイムトラベルで人生がやり直せるわけではなく、嫌なことも受け入れなければならない。なぜならそれが人生だから。
タイムトラベルを通してティムは「日々を精一杯生きること」を学びました。タイムトラベルはそれを気づかせるための、きっかけに過ぎませんでした。最後にそこに帰結させたことが、この映画の素晴らしさだと思います。
有限な人生の時間を不幸な気分で過ごすか、幸せな気分で過ごすか。どうせだったら幸せな気持ちで過ごしたいですよね。
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』を観ればきっと、今日を生きることが好きになると思います!