『トレイン・ミッション』予告編
作品情報
2018年アメリカ・イギリス・フランス映画(原題:The Commuter)/105分
ジャウム・コレット=セラとリーアム・ニーソンが四度目のタッグを組んだアクションスリラー。通勤列車内で陰謀に巻き込まれた元刑事が奮闘する様を描く。
監督ジャウム・コレット=セラ、脚本バイロン・ウィリンガー、フィリップ・デ・ブラシ、ライアン・イングル、出演リーアム・ニーソン、ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、ジョナサン・バンクス、サム・ニール、エリザベス・マクガヴァン他。
感想・評価
『トレイン・ミッション』は、戦う親父リーアム・ニーソンが列車内で陰謀に巻き込まれたことにより、数々の困難に立ち向かう様をリアルタイムで描く密室アクション・スリラーです。監督のジャウム・コレット=セラとリーアム・ニーソンのタッグは『アンノウン』『フライト・ゲーム』『ラン・オール・ナイト』に続き四度目。
四度もタッグを組むなんて、よほど相性が良いんでしょうね。お互いやりやすいのだと思います。映画製作は共同作業ですから、気心の知れた相手の方が撮影もスムーズに進みそうです。
本作はほぼ全編、通勤列車内で物語が進行する密室劇。通勤列車というのが肝のようです。なので原題は「Commuter(通勤者)」とそのまんま。これじゃあ何の捻りもないので、邦題の『トレイン・ミッション』のほうがカッコイイと思います。
この舞台となった通勤列車はメトロノース鉄道ハドソン線という実在の電車です。マンハッタンのグランド・セントラル駅とニューヨーク郊外を結ぶ線で、通勤列車として多くの人が利用しているのでピーク時は混雑しています。
よく映画で見るグランド・セントラル駅はいつも人でごった返してますよね。アレです。グランド・セントラル駅は地下鉄も繋がってるし、レストランやカフェ、マーケットもあるので観光スポットとしても有名ですね。
メトロノース鉄道の車内は映画と同じなので、実際の列車内で撮影が行われたと思いましたが、撮影はスタジオ内の車両セットで行われています。
狭い車内でのアクションシーンは、何度も何度もリハーサルを重ねました。リーアム・ニーソンもとても大変だったようで、撮影が終わって帰ったらバタンキューだったと語っていました。
そんな『トレイン・ミッション』の感想ですが、コレット=セラ監督とリーアム・ニーソンのタッグの映画は過去作含め全部似たような内容で、シチュエーションだけ変えているので、もう、固定した主人公でシリーズ化しちゃってもいいんじゃないかと思う次第です。それだと『96時間』になってしまうからダメでしょうか。いいですよね笑。
あと不満なのが、回数を重ねるにつれリーアム・ニーソンがどんどん弱くなっていること。『アンノウン』のリーアムが一番強かった。今回はブランクのある元刑事役なのかは分かりませんが、だいぶ弱いです。なんかノロノロしています。動きもぎこちない。リーアムももう67歳なんだから仕方ないと言えばそうですが。
こっちとしては超人的な強さのリーアムが見たいんです笑。ノロノロアクションじゃなく、超絶キレキレアクションが見たいんです。彼には80歳までアクションを頑張って欲しいんです笑。
コレット=セラ監督は、よりリアルな人間像を作りたいとでも思ったのでしょうか。アクションなのに笑。物語がもうトンデモなんだから、トンデモ人間でいいんです。あんまり強くない老人のアクションを誰が見たいんだ笑。という評価です。
さて、ここからは一回見ると内容を忘れてしまうだろう『トレイン・ミッション』のあらすじをおさらいとしてラストまで解説していきましょう。一回見ただけじゃ分からない新たな発見と真の黒幕に迫ります!
※ここからネタバレになります。
スポンサーリンク
あらすじ解説
通勤列車
マイケル・マコーリー(リーアム・ニーソン)は元NY市警の警官で、現在は保険のセールスマン。家族は妻と息子一人。
毎朝6時に起床し、タリータウン駅から電車に乗りマンハッタンにある会社へ通勤する規則正しい生活を送る。息子にかかる多額の大学入学資金が心配の種だったが、家族との仲も良好な頑張る親父だ。
しかしある日、10年勤めた会社から突然クビを宣告されてしまう。アメリカの会社はシビアだ。解雇の場合、すぐに荷物をまとめて会社を出なければならない。パソコンにも触れなくなる。クビにした社員にデータを持ち逃げされては困るからだ。
途方に暮れるマイケルは、バーで待ち合わせていた警察時代の同僚のマーフィー(パトリック・ウィルソン)に会社を解雇されたと告白する。ここでマーフィーが「恩返しさせろ」とマイケルに言う事と、市の職員自殺のニュースが流れる事が、今後の事件の真犯人に関する重要な伏線になっています。
二人が会話していると、かつての上司であったホーソーン警部(サム・ニール)が挨拶に来た。マーフィーは警部が嫌いなようだ。マイケルもバツが悪そうだった。
帰りの電車の時間が近づいたため、マイケルはバーを後にし、いつもの通勤電車に乗ろうとする。帰宅時間で混雑する駅。そこでマイケルはぶつかってきた男に、携帯電話を盗まれてしまう。気づいたときにはドアが閉まり、電車は出発する。
陰謀
仕方なく席に着くと、ジョアンナ(ヴェラ・ファーミガ)と名乗る女性が馴れ馴れしく話しかけてきた。人間行動学者と自称するジョアンナは、心理学では人は16の性格に分けられる、と語る。
さらに彼女は、頼みを聞くなら10万ドルの褒美をマイケルにあげると言ってきた。
その依頼とは、プリンという名の人物と、その人物が持つカバンを見つけること。たったそれだけ。それだけで大金が手に入る。そう言い残すと86丁目駅でジョアンナは降りた。
マイケルが彼女の言った通りトイレを調べると、2万5千ドルが入った袋を見つけた。「うそだろ?」とほくそ笑む彼は、お金をバッグに入れ、早速プリンという名の人物を車内で探すことにした。
車内を移動していると、電車は次の駅に到着。そこで乗ってきた黒人少女に「マイケル・マコーリー?」と尋ねられ、「あんた見張られてるよ」と警告の封筒を渡される。その封筒の中には妻の結婚指輪が入っていた。
良からぬことに巻き込まれたと感じたマイケルは、顔見知りの乗客であるウォルト(ジョナサン・バンクス)に、駅を降りたら警察に通報してくれと書かれたメモを渡す。
そして知人の乗客から携帯電話を借り、相棒のマーフィーにかけ、状況を留守電に残した。
ウォルトが降車駅で降りると同時に、ジョアンナから電話がかかってきた。「取引したのにルールを破ったわね」。
そして窓の外を見るように言われると、そこには降車したばかりのウォルトが信号で何者かに押され、バスに轢かれてしまう光景が映し出される。
「プリンとカバンを見つけないと更なる悲劇が訪れる」と脅されたマイケルは、否応なしに
プリン捜索に取り掛かった。
容疑者マイケル
乗客の背もたれの切符のパンチ穴で、誰がどの駅に降りるか分かったマイケルは、コールド・スプリング駅(プリンの降車駅)で降りる人物を絞り込むことにした。
絞り込んだ乗客に近づいたり、車掌に頼んで荷物検査をして貰ったりしたマイケルは、首にタトゥーの入った怪しい男に目をつける。
その男の後を追うと、なぜ後を尾ける?と、取っ組み合いの喧嘩になってしまう。その際にマイケルは、男のカバンにGPSを付けることに成功する。
その後、マーフィー警部補と連絡が取れたマイケルは、二日前に飛び降り自殺とされた政府職員が実はヤバい連中に突き落とされて死んでいて、その事件の目撃者がプリンだという情報を知らされる。失業中で大金を持つ自分が何かの陰謀に嵌められたことをマイケルは悟るのだった。
さらに、プリンだと思われる首にタトゥーの男を探し回っていると、その男の死体を発見する。ポケットを探ると彼の身分証から、FBI捜査官だということが分かった。
そして殺された捜査官の鳴り響く携帯に出ると、またしてもジョアンナからだった。
ジョアンナに仕事を続けるよう脅されたマイケルは、家族の声を聞かせろと頼む。すると電話の向こうから妻と息子の声が聞こえ途切れた。
次に電車が到着した駅は警官に囲まれていた。マイケルの行動を不審に思った誰かが通報していたのだ。取っ組み合いの喧嘩をした男の死体があることで自分が疑われてしまうマイケルは床下に隠れ、車内を調べる警官たちをやり過ごした。
スポンサーリンク
プリン
迫るはあと2駅。それまでにマイケルはプリンを見つけ出さなければならない。手がかりのない中、マイケルは空調を切り、最終車両に乗客を集めた。
そこで目を付けた男とカードゲームをしながら尋問するが、その男は定期券を持っており当てが外れる。
さらに次の車両に座っていたギターを持つ黒人の男にギターケースを開かせるが、ギターしかなかった。ところが、それは左利き用のギターだった。
男が右利きなのを気づいたマイケルが緊急用の斧を手にした時、男は銃を向ける。ギター男はジョアンナの手先だった。誰がプリンだ?とマイケルに詰め寄る。
二人は揉み合いになり、マイケルによって男は車外に放り投げ出された。
そうこうするうちにマイケルはとうとうプリンを見つける。それは若い女学生だった。
しかし、ギターの男から奪った銃を持つマイケルは車掌に通報されてしまう。追い込まれたマイケルは、終点に着く前に電車を止めろと車掌を脅した。
車掌が列車を止めようとレバーを引いた瞬間、車輪の一部が爆発し、ブレーキが壊れた列車は暴走してしまった。
このままだと脱線すると恐れたマイケル達は、車両の連結を切り離すことにした。
一苦労の末、マイケルの活躍で切り離しに成功するが、スピードに乗った電車は粉々になってしまう。だが、マイケル達の乗った車両はなんとか無事に済んだ。外に出ようとする乗客達に、マイケルは「出るな!外の誰かが我々を狙ってる」と言い、窓を新聞紙で覆わせた。
それからプリンであるソフィア(エラ=レイ・スミス)に「なぜ命を狙われてるのか?」と問うと、彼女は真相を話す。彼女は自殺に見せかけて殺された市職員エンリケのいとこであり目撃者であること、彼を殺したのは警官だったことを。
ラスト結末
間もなくすると、外は警察に包囲されていた。到着したホーソーン警部が「人質を解放しろ」とマイケルに呼びかける。そしてマーフィーをマイケルのもとへ送った。
マーフィーがマイケルを説得している時、「善人ぶるな。崇高な精神なんて古い」という言葉を口にする。その言葉はエンリケが殺された時、ソフィアが犯人から聞いた言葉だった。
マイケルはマーフィーが自分を嵌め、市職員を殺した犯人だと白状させる。
事の真相は、権力者が何かの証拠の流出を恐れ、マーフィーを使って市職員を殺し、さらにプリンも消そうとしていたのだった。
だが、家族の命のことを持ち出されたマイケルはマーフィーに銃を渡してしまう。するとすぐにマーフィーは「プリンは誰だ?」と乗客に銃を向けた。
乗客とマイケルはマーフィーと揉み合いになった末、タグを奪ったマイケルの機転により、マーフィーはスナイパーによって射殺される。
車両に乗り込んだ警官たちの中に、ソフィアを証人として保護しようとしていたFBIのガルシア捜査官がいた。彼によってマイケルの家族もまた無事だった。
全てを終え、家族と再会したマイケルが帰ろうとすると、ホーソーン警部によってマーフィーと同僚数人が調査下にいた事を知らされ、こんな目に遭わせて済まないと謝罪された。
後日、通勤列車内でアレクサンドル・デュマの「モンテ・クリスト伯」を読むジョアンナの姿があった。彼女に近づく一人の男。
「まさか君も通勤客の一人だったとはね」と対面するマイケル。
「あなたに何ができるの?」と嘲笑するジョアンナに、マイケルは警察バッジを見せ微笑むのだった。終わり。
黒幕は誰?
さて、この映画の黒幕が誰かお分かりになりますか?
マーフィーでしょうか?それともジョアンナ?映画内では明確に示されなかったので混乱した人も多いはず。
マーフィーはただの使い走り、実行犯です。権力者に命令されただけと言ってるので勿論黒幕ではありません。
マーフィーに電話で指示していたのはジョアンナです。ではジョアンナが黒幕でしょうか?
答えは、いいえ違います。ジョアンナもただの指示役です。
理由は、ラストの対面でマイケルが「君が仕える人々(字幕では「君たち」)」と言っているからです。
実は黒幕の正体は、ラストのニュースが飛びかうシーンでキャスターが読み上げています。
「市長の関与が…」「市役所と関係が…」。
映画前半に、殺された市の職員(エンリケ)には贈収賄に関する捜査があったとニュースで流れていました。
つまりエンリケが持っていて、プリン(ソフィア)に渡った証拠とは、賄賂に関する証拠です。
エンリケは都市計画課の職員なので、金の流れをよく知っていたのでしょう。都市計画なんて、賄賂がつきものの世界です。賄賂の証拠を握っていたので彼は消されたのです。
市の都市計画に関して一番の権力者は誰か?賄賂は誰に渡ったのか?という事を考えれば、「市長の関与が…」というニュースにピンと来ますよね。
そうです、黒幕は市長です。また、その周囲にいる既得権益に群がる人々。
そういうことでジョアンナは、市長もしくは周囲の者たちに指示されていたと推測されます。
まとめ
『トレイン・ミッション』は代わり映えしない日々を過ごす通勤者が、ある日トンデモナイ出来事に巻き込まれる映画でした。
毎日、通勤電車やバスで学校や職場に通っている人は多いと思います。変わらない日常、変わらない風景に辟易していますか?
退屈な日々を打破するため、今作のような出来事が身に降りかかってほしいですか?
絶対嫌ですよね笑。
まったく平和が一番です。どんなに退屈な日々の通勤でも平和に過ごせることが一番だなあ、そんなことを思った映画『トレイン・ミッション』でした!
『トレイン・ミッション』は今すぐこちらでご覧になれます↓
トレイン・ミッション(字幕版)