『1917 命をかけた伝令』ネタバレあらすじ解説 戦争で表現したものとは?


『1917 命をかけた伝令』予告動画

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作品情報

2019年イギリス・アメリカ映画(原題:1917)。119分。
2020年度アカデミー賞3冠を獲得。第一次世界大戦を舞台にイギリス伝令兵の一日を描いた戦争ドラマ。

監督サム・メンデス、脚本サム・メンデス、クリスティ・ウィルソン=ケアンズ、音楽トーマス・ニューマン、撮影ロジャー・ディーキンス、出演ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロング、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、アンドリュー・スコット、リチャード・マッデン。

感想・評価

1917 命をかけた伝令』はサム・メンデス監督が祖父(アルフレッド・メンデス)から聞いた話を元に、第一次世界大戦下の伝令役のイギリス兵の一日をリアルタイムに描いた戦争スリラー映画です。実話ではありません。あくまで祖父の話がベースのフィクションです。

第77回ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞と監督賞をはじめ、英国アカデミー賞など幾多の賞を受賞。第92回アカデミー賞においては撮影賞(ロジャー・ディーキンス)、録音賞、視覚効果賞を獲得した世界的にも評価の高い作品です。

本作の肝は、何といっても全編ワンカットによる撮影。厳密にいうとワンカットではありませんが、ワンカットに見えるよう切れ目が判断できないように作られています。

その映像はまさに圧巻の一言。観客が戦場にいる兵士の視点を体感できる圧倒的な臨場感を生み出しました。サム・メンデス監督も「兵士達の体験を観客にも体験してほしかった」と語っています。

ワンカット映像を実現する為に、ロジャー・ディーキンスによる優れた撮影技術は勿論のこと、俳優の台詞の時間からセットの長さまで、すべてが完璧に計算され配置されています。

そのため、キャストは計算通りに動くことが必須でした。アドリブはダメです笑。

全てのシーンにおいて、一人でも変な動きをしたらやり直しですもんね。なので、撮影前のリハーサルに6ヶ月もの時間を費やしています。

ちなみに、撮影のために約1.6キロメートルに及ぶ塹壕が掘られました。印象的な塹壕のシーンはスタンリー・キューブリックの映画『突撃』から影響を受けてるそうですよ。

本作はメンデス監督にとって、とてもチャレンジングな作品でした。ワンシーンに見えるように作るのは想像を絶する苦労が伴います。

その一端を担ったのがVFXを扱う視覚効果チームです。最新のVFX技術を用い、見事アカデミー賞視覚効果賞を受賞しました。

VFXとはなんぞやというと、例えば戦闘機による空中戦のシーン。空を飛ぶ戦闘機はデジタル(CG)で作られています。撃墜され、納屋に墜落した戦闘機はレプリカ(実物大の模型)です。

映像ではその境目が分からなくなっていますね。デジタルとアナログが融合しています。つまり虚構と現実の融合をスムーズに見せる。それがVFX技術です。

メイキング映像はこちら↓

そんな技術的にも優れた『1917 命をかけた伝令』の感想ですが、こりゃ太宰治の「走れメロス」だなと思った人は多かったことでしょう。戦争版走れメロス。とはいえ、とっても面白かったです!

監督が「戦争映画というより、戦争スリラーだ」と言うように、兵士視点のドキドキと手に汗握る緊張感が常にあり、身震いしました。IMAXの劇場で鑑賞すれば、その臨場感はさらに増します。

視覚的にも、風景の美しさと戦争の悽惨さが混在していて、その世界に深くのめり込みました。いつの間にか主人公と一緒になって、間に合ってくれ~と応援しました笑。

物語的には伝令を伝えるだけなので至極単純だけど、戦場を仮想体験するにはもってこいの映画です。なので『1917 命をかけた伝令』は体験映画として優秀です。

プライベート・ライアン』のような壮絶な銃撃戦を求める人には物足りないかもしれませんが、基本的には誰が見ても面白い映画だと思います。

また、イギリスの豪華スター総出演なので、イギリス俳優好きにもたまりませんね!

さて、ここからは『1917 命をかけた伝令』のあらすじをラストまで追いながら、映画の詳細を解説していきましょう。エンディングの見方が変わるとっておきの逸話もご紹介しますよ!

※ここからネタバレとなります。


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ネタバレあらすじ解説

伝令ミッション

1917年4月6日、第一次大戦下の北フランスの西部戦線において、イギリス軍とドイツ軍はにらみ合いを続けていた。

若きイギリス兵であるトム・ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)が原っぱで寝そべっていると、軍曹から道具を取って来いと命令される。ブレイクは相棒のウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)を起こし、一緒に向かう。

二人が塹壕を歩いていると、軍曹に呼び止められ作戦室に来いと言われた。

中に入ると、エリンモア将軍(コリン・ファース)が待ち受けていた。

将軍曰く、マッケンジー大佐率いる1600名の兵士からなるデヴォンシャー連隊が、撤退したドイツ軍を追って総攻撃をかけるという。しかしそれは、イギリス軍をヒンデンブルク線まで引きつけ、待ち伏せて大打撃を与えるためのドイツ軍による罠だった(アルベリッヒ作戦)。

電話線は全て切られ、通信が途絶えたので、ブレイクとスコフィールドは伝令を頼まれた。現地に行ってマッケンジー大佐に攻撃中止の命令書を渡すように、と。夜明けまでに伝令を伝えないと、連隊は全滅する恐れがある。

デヴォンシャー連隊にはトムの兄もいたため、ブレイクはすぐに出発した。

しかし気が進まないスコフィールドは、少し話そうとトムを引き留めるが、ブレイクは耳を貸さず塹壕を突き進み前線へと向かう。

二人が防空壕にいたレスリー中尉(アンドリュー・スコット)に任務を伝えると、中尉は無人地帯(ノーマンズ・ランド)へと二人を送り出した。

前線

二人は腰をかがめながら慎重に、鉄条網を越え、無人地帯を突き進んだ。

至るところに転がる死体、水たまり、不気味な静寂が戦場を包んでいた。

しばらく進むと、最前線のドイツ軍の塹壕に辿り着いた。そこには人っ子一人いなかった。ドイツ軍は本当に撤退していた。

二人が塹壕横から地下壕に入ると、そこにはベッドが並列していた。食料がないか探していると、ドイツ軍が仕組んだワイヤートラップにネズミが引っ掛かり、爆弾が爆発する。

砂煙が舞い散る中、ブレイクは瓦礫に埋もれるスコフィールドを担ぎ上げ、崩れる地下壕内をなんとか脱出した。

外に出ると、ドイツ軍が残した陣地が広がっていた。ブレイクはレスリー中尉に言われた通り照明弾を打ち上げる。

さらに林を抜け、平原を進むと、放棄された農家を発見。

二人が家屋や周辺を探索していると、スコフィールドが牛とバケツに入ったミルクを見つける。水筒にミルクを入れていると、イギリス軍とドイツ軍の戦闘機が空中戦を繰り広げているのが見えた。

イギリス軍機がドイツ軍機を撃ち落とすと、納屋にドイツ軍機が墜落してきた。燃え盛る炎の中、二人はドイツ軍のパイロットを操縦席から助け出す。

「楽にしてやろう」とスコフィールドが言うと、ブレイクは「水を持ってこい」と井戸を指差した。

スコフィールドが水を汲んでいると「やめろ!」という声が聞こえ、振り返ると、ブレイクが
ドイツ兵に腹部を刺されていた。

スコフィールドは即座にドイツ兵を撃ち殺し、ブレイクのもとへ駆け寄る。しかし応急手当も空しく、ブレイクは息絶えた。

突然の友の死。茫然自失するスコフィールドだが、このミッションを必ず成し遂げることを胸に誓うのだった。

街へ

彼がブレイクの遺体を運んでいると、イギリス兵達が「大丈夫か?」と声を掛けてきた。彼らはスミス大尉(マーク・ストロング)が率いる中隊で、たまたま傍を通りかかっていた。

スミス大尉はスコフィールドをエクスト=サン=メンの街までトラックに乗せてくれた。

途中でトラックを降り、街へと続く壊れた橋を渡っていると、廃墟に隠れたドイツのスナイパーが狙撃してきた。

スコフィールドは銃撃を避け、廃墟の窓に見えるスナイパーを撃つと、銃撃は止んだ。さらに廃墟に入り、スナイパーのいる部屋のドアを開け、互いに撃ち合う。ドイツ兵を仕留めたが、スコフィールドも頭を撃たれ倒れる。

しばらくして、気絶していたスコフィールドが目を覚ますと、外はすっかり日が暮れていた。

照明弾の灯りを頼りに暗闇の街中を進むと、ドイツ兵に見つかり銃撃される。

スコフィールドが逃げるように建物の地下に隠れると、そこにはフランス人女性が赤ん坊と共にいた。女性はスコフィールドの傷を手当てしてくれたので、お礼に食べ物とミルクを与えた。そして、赤ん坊にエドワード・リアの詩「ジャンブリーズ」の一節を歌い聞かせた。

夜が明けてきたので、スコフィールドは民家を後に先へと急ぐ。

が、途中でドイツ兵に見つかり、後を追われる。全力で逃げるスコフィールドは銃弾をかわし、川へと飛び込んだ。

水流の勢いに流されるまま川を下ると、桜舞い散る河岸へたどり着く。河岸は兵士の死体で満ちていた。


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結末

陸に上がり、森の中を進むスコフィールドの耳に、英語の歌が聞こえてきた。

歌声に導かれると、なんとそこにはデヴォンシャー連隊がいた。

しかし、クロワジルの森にいたのは第二陣で、第一陣の攻撃はすでに始まっていた。

急いで指揮官のマッケンジー大佐を探すスコフィールド。

塹壕を進むと、兵士たちは攻撃態勢に入り、あとは合図を待つだけだった。

そんな中、ドイツ軍の砲弾が降り注ぎ行く手を塞ぐ。

笛の合図で味方の攻撃が始まると、スコフィールドも前線に飛び出し、戦場を駆け抜ける。

このクライマックスの前線を横切るシーンで、スコフィールドが味方に当たって倒れるのは
完全なアクシデントですが、そのまま本番で使われています。

なんとかマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の元に辿り着くと、攻撃の中止を訴えた。

もう遅いと聞く耳を持たない大佐に、これは敵の罠だということが書かれた命令書を渡すと、
大佐は攻撃中止を決断した。

ほっと胸をなでおろしたスコフィールドは、次にトムの兄であるジョセフ・ブレイク中尉を探す。

中尉は医療施設にいると聞きそこへ向かうと、テントは多くの負傷兵で一杯だった。

ベッドに横たわる負傷者の中からブレイクを探すが見つからず、途方に暮れていた時、横で指示を出していた男がいた。

スコフィールドが「ブレイク中尉ですか?」と尋ねると、彼は「そうだ」と答えた。

ブレイクにトムの死を伝え、形見を渡すスコフィールド。

トムの母親に手紙を書く許可を尋ねると、ブレイク中尉は快く応じ、スコフィールドに感謝を伝えた。

すべての任務を終え、一本の樹のふもとに腰を下ろしたスコフィールドは、妻と二人の娘の写真を眺め、故郷を想いながらゆっくりと目を閉じた。

ちなみに逸話として、スコフィールドが腰をおろした木ですが、撮影中にエキストラたちがあの木をトイレとして頻繁に使っていたそうです笑。まさかエンディングで使われるとは誰も思わなかったそうな笑。

まとめ

『1917 命をかけた伝令』は、兵士が樹の下に座っているシーンで始まり、兵士が樹の下に座っているシーンで終わります。物語の始めと終わりで主人公は同じ体勢をしていますが、彼の人生観はまったく変わってしまったことでしょう。

最初と最後のシーンが何を表しているかというと、それは人生を表しています。まるで、ベッドで生まれベッドで人生を終える人間のように。

本作に壮絶な戦闘シーンがないのは、戦争映画として描きたかったのではなく、人の人生の道程を戦争を通して表現したかったのではないでしょうか。

目標を決め、困難を乗り越えて、目的を達成する。スコフィールドの歩んだ道のりは人生そのものです。

マッケンジー大佐が「来週には作戦はまた変わる」と言った時、命を懸けた伝令の虚しさを彼は痛感したことと思います。

そして最後に想いを馳せたのは、やはり故郷でした。

人は人生の最後に何に想いをはせるのでしょうか?

そういったことで、素晴らしい映像の没入感とともに戦争を通して人生を描いた映画『1917 命をかけた伝令』でした!

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