『ザ・ウォール』ネタバレ感想評価 実話ベースの戦争スリラー!


『ザ・ウォール』予告動画

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『ザ・ウォール』作品情報

2017年アメリカ映画(原題:The Wall)。
バリー・シール/アメリカをはめた男』のダグ・リーマン監督がイラクを舞台に描いた戦争スリラー。出演アーロン・テイラー=ジョンソン、ジョン・シナ、ライト・ナクリ(声の出演)。

『ザ・ウォール』あらすじ

2007年イラク戦争は終わり復興事業が始まる。米軍の偵察スナイパーであるアイズ(アーロン・テイラー=ジョンソン)とマシューズ(ジョン・シナ)は、石油パイプライン現場を監視していた。そこには8名の現場作業員達が何者かに襲撃され倒されていた。監視を続け18時間が過ぎ、敵の気配がないことを確認した二人は、壁の背後の敵の存在に怯えつつ現場に近づいていくのだが…。

『ザ・ウォール』感想評価

なぜ戦うのか?誰のために戦うのか?

『ザ・ウォール』はイラク戦争を題材にスナイパーによる極限の心理戦を描いた戦争スリラーです。

「ブラックリスト(映画化されてない脚本の人気ランク)」にあったドウェイン・ウォーレルの脚本をアマゾンスタジオが買い取り映画化しました。

監督は『ボーン・アイデンティティー』や『バリー・シール/アメリカをはめた男』のダグ・リーマン。ダグ・リーマンは安定して面白い映画を撮ってくれる監督なので安心感があります。本作も出演者たった3人の低予算映画ですが、批評家の評価もそこそこ良く、上映時間も短いので気軽に観れます。

『ザ・ウォール』は実話からヒントを得た作品です。イラク戦争時に米軍を恐怖に陥れたジューバという実在のスナイパーを題材にしています。

ジューバは当時、アメリカ兵を次々と狙撃する様子をインターネット動画に投稿していた狙撃手。イラクでは伝説的なスナイパーとして一部で崇められているそうです。

そんな『ザ・ウォール』の感想は、なかなか面白かったです。全編ほぼ一人芝居なのに最後までドキドキして観ることが出来ました。

見えない敵に怯えながらの心理戦の演出が上手でラストまで飽きさせません。ダグ・リーマンの演出力が光ります。

ただ、『ザ・ウォール』は観ていて結構ヤキモキすると思います。胸がスッキリするような映画ではないですね。不条理スリラーとでも言うんでしょうか。とにかく主人公の努力が報われず不条理です笑。

スナイパーを題材にした映画は『アメリカン・スナイパー』をはじめ沢山あります。だいたい主人公の国側の視点で描かれるんですが、本作はちょっと異質です。主人公のアメリカ側の視点よりも、イラク側の視点により重きを置いていると感じました。

兵士も普段はただの一般市民。国は違えど一般市民同士が戦う理由ってなんでしょう。そんな戦争自体の不条理さをスリラー形式で表現した映画が『ザ・ウォール』です。

さて、ここからは登場人物の紹介を物語のあらすじを交えながら解説(ネタバレ)していこうと思います。



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『ザ・ウォール』ネタバレ解説

アレン・アイザック軍曹(アーロン・テイラー=ジョンソン)


本作の主人公アイズことアイザック。何者かによって8名が撃たれた石油パイプラインの現場へ偵察に行ったスナイパー。同郷の仲間ディーンのスコープを愛用する。

現場で8名があっという間に頭を撃ち抜かれていることを心配し、最強のスナイパー「ジューバ」の存在を疑う。

しかし相棒のマシューズが「お前の妄想だ」と痺れを切らして現場の様子を伺いに行くが、何者かに狙撃される。アイザックもマシューズを助けようとした際、無線機と足を撃たれ壁に隠れる。

マシューズは倒され、足の痛みでアイザックも気を失うが、無線から流れてきた声で目が覚める。

隊長と名乗る無線の声の主とのやり取りから、英語のアクセントが怪しいと気づき、無線の相手がイラク人のスナイパーだと気づく。

銃声と撃たれた角度から敵の位置を計算し、ゴミの山に隠れていることを推測する。そして敵の正体が35名のアメリカ兵を狙撃したジューバだと見抜く。

その後、ジューバの狙撃をかわし倒れた兵の無線機を取ることに成功。しかし、その無線機さえジューバにアンテナを撃たれ壊れていた。万事休すと思われたが、倒れていたマシューズが息を吹き返す。

マシューズにゴミの中にいるジューバの場所を知らせ希望を託すが、マシューズの狙撃は失敗に終わる。

灼熱の太陽、足からの出血、いよいよジューバに追い詰められ、自分のミスで誤射してディーンを死亡させたと白状する。家に帰りたいとジューバに泣き言を言うが、そこに味方からの無線が入る。

アイザックを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンは髭づらの砂まみれでかなり汚く見えるが、じつはイケメン。『キック・アス』の冴えない主人公役で有名なイギリスの俳優さんです。『ザ・ウォール』では彼の素晴らしい演技のおかげで最後まで緊張感が保たれています。余談ですが、本人は19歳の時に23歳年上の女性監督サム・テイラー=ウッドと婚約し、その後結婚。若くして4人の子供のパパでもあります。

マシューズ軍曹(ジョン・シナ)


偵察部隊のスナイパー。強面で射撃の腕は良いが、我慢できず様子を見に行きジューバに狙撃される。

撃たれたので物語のほとんどを倒れて過ごすが、途中で意識を戻し、ゴミの山に潜むジューバを狙撃する。しかし失敗し、頭を撃ち抜かれる。

出番の少ないマシューズを演じたジョン・シナは、WWE所属のプロレスラーです。筋骨隆々のすごい身体で軍曹役が似合いますね。

ジューバ(ライト・ナクリ)


イラク人の最強スナイパー。声だけで姿は現さない。エドガー・アラン・ポーの詩が好き。ピンポイントで無線機や水筒を狙ったり、足を撃ったり出来る超一流の腕を持つ。

民間人の教師だったが学校が爆破され、多数の生徒を失ったことでアメリカを激しく憎んでいる。

アイザックに仲間や家族のことを話せとしつこく迫り、個人の情報を得ようとする。得た情報を巧みに操り、救援部隊を来させては全滅させることを繰り返す。アメリカ軍はジューバの無限の復讐ループにはまる。

「戦争は終わったのに、なぜ君はまだここにいる?」というセリフが印象的。

先程も説明したようにジューバは、イラク戦争時の実在のスナイパー。戦後は行方不明になっている。ジューバが特定の人物なのか、はたまたプロパガンダ的に作られた人物なのかは分かっていない。



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ラスト結末


マシューズも撃たれ万事休すのアイザックだったが、救援ヘリが来ることを無線で知る。しかしバグダッド本部とやりとりする声の主は、アイザックに成りすましたジューバだった。

救援ヘリが来た際、狙撃によってヘリが撃ち落とされるのを防ぐため、アイザックは身を隠していた壁を倒し、ゴミの山の中のジューバを狙撃する。

その後ジューバからの銃声も無くなり、無事救出されヘリで運ばれるアイザック。

しかしヘリがゴミの山の上を通ると、狙撃され、ヘリは墜落してしまうのだった。そして再び、本部との無線のやりとりを成りすますジューバがそこにいた。終わり。

まとめ

『ザ・ウォール』の主人公アイザックは全編を通して、壁に隠れていただけでぶっちゃけ何もしていません。ジューバと会話していただけです。

彼が唯一したことは、壊れた無線機を拾いに行ったくらい。あとはジューバに個人情報を教えてしまって、まるで役に立っていない笑。

なのに最後まで『ザ・ウォール』をスリリングに観ることが出来たのは、監督の演出力と俳優の演技力のおかげだと思います。

荒涼とした砂漠。不気味な敵の声。これだけで見事にスリラーを描き出したのは感服します。低予算でも設定と演出で面白い映画を作れる良いお手本ですね。

さらに、殺し合う者たちは普段は只の民間人同士という戦争の不条理さに焦点を当て、きちんとメッセージ性を含む映画に仕上がっているのは素晴らしいんじゃないでしょうか。

また、アメリカ映画なのにイラク側の勝利で終わっている所も異質で面白かったです。たぶん観客はみんなアイザックに味方することを分かって、皮肉ってるんでしょうね。

壁が隔てているのは国境なのか?それとも人々の心なのか?戦争風刺スリラー『ザ・ウォール』を観てそれぞれが感じ取ってほしいと思います。

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