『レヴェナント: 蘇えりし者』ネタバレ感想解説 ラストの意味は?


「レヴェナント:蘇えりし者」予告動画

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『レヴェナント: 蘇えりし者』作品情報

2015年アメリカ映画(原題:The Revenant)。
実話を基にしたマイケル・パンクの小説『蘇った亡霊:ある復讐の物語』を原作に、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが監督した壮絶なサバイバルドラマ。出演レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、ウィル・ポールター、フォレスト・グッドラック他。音楽坂本龍一、撮影エマニュエル・ルベツキ。第88回アカデミー賞主演男優賞、監督賞、撮影賞受賞。

『レヴェナント: 蘇えりし者』あらすじ

毛皮ハンターの一団のガイドであるヒュー・グラスは、その道すがら熊に襲われ瀕死の重傷を負う。仲間たちは彼の最期を見届ける為、2名と彼の息子を残し出発するが、残ったメンバーのフィッツジェラルドは約束を破る行動に出るのだった…。

『レヴェナント: 蘇えりし者』感想評価

復讐の先に男が見たものは?

『レヴェナント: 蘇えりし者』は西部開拓時代に実在した罠猟師ヒュー・グラスの半生をベースに描かれたサバイバル映画です。

第88回アカデミー賞でディカプリオが念願の主演男優賞を受賞した他、イニャリトゥ監督も2年連続の監督賞、エマニュエル・ルベツキも3年連続となる撮影賞を受賞した評価の高い作品です。

ヒュー・グラスは1823年、実際に狩猟中にクマに襲われ重傷を負い、仲間に見捨てられながらも320キロの道のりを這って生還したスゴい人物です。その際付けられたあだ名が「蘇った亡霊(レヴェナント)」。これがレヴェナントの意味。

この逸話はアメリカでは有名だそうで『レヴェナント: 蘇えりし者』以前にも『荒野に生きる(1971年)』の題名で映画化されています。

『レヴェナント: 蘇えりし者』は自然と格闘しながらの撮影が本当に過酷だったようで、ロケ期間は9ヶ月にも及んでいます。イニャリトゥは詩的な美しい映像を追求し、特に自然光にこだわりました。また、冬の場面の撮影のため、雪が溶けたカナダからアルゼンチンのティエラ・デル・フエゴへロケ地を変更しました。

その製作陣の労苦によってあの圧倒的な映像美が実現されたことに賞賛を送りたいです。とにかくこの映画はルベツキの創りだす映像が凄いのなんの。これぞ映画にしかできない!という荘厳な大自然のビジュアル。それに加えて坂本龍一の重厚な音楽が、観る者をこの途轍もない世界に引きずり込む。

『レヴェナント: 蘇えりし者』の感想は、素晴らしいとしか言いようがないです。映像も音楽も演出も演技も全て素晴らしい。ただ唖然としたまま虜になっていました。

冒頭のネイティブ・アメリカンとの戦闘シーンなんて驚嘆に値します。長回しで撮られているんですが、あんな映像見たことない。イニャリトゥの圧倒的な才能にビビります。

また、この映画の幾つかの叙情的で印象的なシーンは、映像の詩人と呼ばれたソ連の監督タルコフスキーの映画をオマージュしています。イニャリトゥはタルコフスキーが大好きで多大な影響を受けています。

それにしてもアメリカ西部開拓時代は、移動するにも本当に大変だったんでしょうね。サバイバル術を身につけなければ、自然の厳しさを前に何もできないだろうと思います。

それでは、ここからはそんな映画『レヴェナント: 蘇えりし者』の登場人物の紹介とストーリーの解説・考察をしていきたいと思います。死と復活の意味とは?



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『レヴェナント: 蘇えりし者』登場人物

ヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)


毛皮ハンター団のガイド。ポーニー族の妻を白人達に殺された過去を持つ。思慮深いが、その瞳は怒りと悲しみに満ちている。

妻との混血の息子ホークを連れ、一団に同行する。土地勘があるので先住民の先を読んで一団を導く。見回り中、グリズリーに襲われ瀕死の重傷を負う。

彼の燃えたぎる復讐心が、彼を死の淵から復活させる。

フィッツジェラルド(トム・ハーディ)


毛皮ハンター団の一員。頭の皮をアリカラ族に剥がされた過去を持ち、先住民を野蛮人と罵る。気性が粗くよくグラスに喰ってかかる。

グラスがクマに襲われた際、グラスの最後を見届けるために残る。しかし約束を破ってグラスの息の根を止めようとし、それを制止したホークを殺害する。自己中心的で卑怯な男。

ジム・ブリジャー(ウィル・ポールター)


毛皮ハンター団の気弱な青年。グラスの死を見届けるために残ったもう一人。

フィッツジェラルドのグラスに対する卑怯な振る舞いに怒ったが、逆に言いくるめられ、大人しく従うことになる。

ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)


毛皮ハンター団の隊長。グラスに信頼を置き道案内を任せる。グラス重傷の際、彼の死を見届ける者に報酬を約束する。

隊長としては頼りない一面もあるが、情のある結構いい人。

アリカラ族


ポーニー族やアメリカ人と対立しているインディアンの一族。酋長は白人にさらわれた娘ポワカを捜している。フランス人と取引し、毛皮と交換に馬をもらう。



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ネタバレ解説考察

オープニングの戦闘

「諦めてはいけない いいな? 息が続く限り戦うのだ」

オープニングで流れる水のシーンは、タルコフスキーへのオマージュ。タルコフスキー映画では、水は神を象徴します。


暖を取りながら休憩していた毛皮ハンター一行。そこに突然矢が突き刺さり、アリカラ族が襲い掛かる!

ドーンという太鼓が響き渡るこの戦闘シーンは圧巻の一言。否応なしに物語に惹き込まれます。一人また一人倒され、一団は船まで逃げるのが精一杯。戦闘はアリカラ族に圧倒され、毛皮はほとんど没収されます。

船で逃れた一団は、グラスの進言でミズーリ川を下るのを諦め、山沿いのルートで砦まで戻ることを決めます。

熊に襲われるグラス


偵察中のグラスに、突然グリズリーが襲い掛かる!熊が襲ってきたのは小熊と居たため。

爪で喉を引き裂かれ、手や肩をかみ砕かれ、クマの圧倒的なパワーの前に散々いたぶられるグラス。しかし銃とナイフで応戦し、なんとかグリズリーをやっつけます。

熊は本物か?と思われる人がいますが、熊はCGです。超リアルなので本物に見えますよね。メイキングではスタントマンがブルースーツを着て熊の動きをし、それをCG加工しています。

ホークの死


仲間たちが瀕死のグラスを発見、手当をし担架に乗せたまま運びます。

しかしグラスを抱えながら雪山を越えるのは厳しく、ヘンリー隊長はグラスを運ぶのを断念。毛皮会社から出す報酬と引き換えに、グラスの最後を見届ける者を募ります。残ったのはホークとブリジャーとフィッツジェラルド。

しばらくすると、グラスの死を待つのに耐えきれなくなったフィッツジェラルドは、グラスの息を止めようとします。そこで止めに入ったホークと揉みあいになり、ホークを殺害。

また、アリカラが攻めてきたとブリジャーに嘘をつき、グラスをほったらかして二人で逃走します。

グラスのサバイバル


体力が回復し、息子を見届け、這いながらフィッツジェラルドの後を追うグラス。ここからはしばらく、極寒の地でのグラスのサバイバルが続きます。

喉を火薬で焼き付けたり、川に流されたり、生魚を食べたり、バイソンの群れと遭遇したり。ちなみにバイソンの群れはCG。

アメリカンバイソン(バッファロー)は入植者達の乱獲により激減し、現在は保護されています。グラスが何度も夢の中で見るピラミッドの骨は、アメリカンバイソンの頭骨です。

その後、バイソンの生肉を食べるポーニー族の戦士ハイカックに出会います。グラスの妻は同じポーニー族だったので、ハイカックと交流を深めていきます。

ハイカックがグラスにした治療法は、先住民の伝統的な儀式であるスウェット・ロッジ(発汗小屋)と呼ばれるもので、小屋をサウナ状態にして身体を癒すそうな。

ポワカを救う


グラスがスウェット・ロッジから目を覚まし外に出ると、フランス人にハイカックは殺され、木に吊るされていた。

フランス人の野営を見つけると、捕らわれていたアリカラ族の娘ポワカを助け、馬を盗んで逃げるグラス。

その後、野宿をしていた時、アリカラ族に見つかり追われ、馬と共に崖から転落。崖下で死んだ馬の内臓を取り出し、馬の皮に包まり寒さをしのぎます。ちなみに、この馬は作りモノなのでご安心を笑。



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ラスト結末


グラスがカイオワ砦に戻ると、フィッツジェラルドは金庫の金を盗みすでに逃亡。

ラストはグラスとヘンリー隊長とフィッツジェラルドの戦い。先にヘンリーがフィッツジェラルドに撃たれ、次にグラスが格闘する。

生死を賭けた男の戦い。両者必死な揉み合いの末、グラスはフィッツジェラルドに致命傷を与える。

そこへアリカラ族が現れる。グラスは瀕死のフィッツジェラルドを川に流し彼らの元へ。アリカラ族に止めを刺されたフィッツジェラルドは、とうとう息絶えたのでした。

グラスが「復讐は神の手に委ねる」と言って川に流したのは、水が神を象徴しているからです。また、グラスがアリカラ族に見逃して貰えたのは、酋長の娘ポワカを救ったからです。

まとめ

復讐を成し遂げたグラスでしたが、ラストカットの顔の表情に充足感は見られません。それは報復しても息子は生き返らない虚しさ?目的を果たした後の生きる意味への問い?

それらもあると思いますが、最後に妻が微笑んだことに重要な答えがあります。

というのも『レヴェナント: 蘇えりし者』はグラスの復讐だけではなく、ネイティブアメリカンの復讐の物語でもあるからです。

グラスの復讐は妻によって導かれ、最後はグラス(白人)ではなく、先住民の手によって果たされました。これがネイティブアメリカンの白人に対する復讐です。

それに気づいたからこその、グラスのあの複雑な表情ではないかと思います。

グラスの旅は入植者(白人)の贖罪の旅でもあったのです。彼の「死と復活」を通してその罪は贖われ、また同時にネイティブアメリカンの救いも成し遂げられました。なぜなら妻とグラスは一心同体だからです。つまり全員救われたのです!

救われたのになぜあんな悲壮な表情?と思うかもしれませんが、白人のネイティブアメリカンに対する心苦しさを代弁した表情だからだと思います。

『レヴェナント: 蘇えりし者』は死と復活の旅。そしてそれは罪の贖いと救いの旅。とにかく、このようなハイクオリティの映画が観れて本当に幸せです!

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