『シャッター アイランド』感想とネタバレ解説 物語の真相に迫る!


映画『シャッターアイランド』予告動画

スポンサーリンク

作品情報

2010年アメリカ映画(原題:Shutter Island)
デニス・ルヘインの同名小説を原作に、マーティン・スコセッシが映画化した本格ミステリー。絶海の孤島“シャッター アイランド”を舞台に奔走する保安官の姿を描く。主演にレオナルド・ディカプリオ、共演にマーク・ラファロ、ベン・キングスレー、他キャストにミシェル・ウィリアムズ、エミリー・モーティマー、マックス・フォン・シドー。

『シャッターアイランド』あらすじ

レイチェルという女性患者の失踪事件の捜査のために、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は相棒のチャック(マーク・ラファロ)とともに、精神病の犯罪者の収容施設がある孤島シャッターアイランドへフェリーで向かう。その施設は多数の警備と電流が通る有刺鉄線が張り巡らされ厳重な管理下に置かれていた。

コーリー院長(ベン・キングスレー)に失踪女性の部屋を案内されたテディは、謎のメッセージが書かれたメモを見つける。メモには「4の法則 67は誰?」と書かれていた。捜査を進めるうちに、人々のあいまいな証言や事件に協力的でない施設側に、テディは徐々に怪しいと思い始める…。

『シャッターアイランド』感想

『シャッターアイランド』は、スコセッシがディカプリオとタッグを組んで仕掛ける本格ミステリーです。

物語の随所にトリッキーな謎が仕掛けられ、観終わった後も再び楽しめる完成度の高い作品となっております。往年のミステリー映画へのオマージュも散見し、スコセッシならぬヒッチコック的風味が色濃く感じられます。

感想として、驚愕するオチへの引っ張り方が非常に見事で、完璧なミステリー映画だと言えます。すっごく面白いです。『シャッターアイランド』の凄いところは180度違う視点で2度観賞できるって所です。それがこの映画の魅力であり、人気がある理由だと思います。

舞台は1954年に孤島で起きる失踪事件から始まります。なんで1954年が舞台なんだろうって思うかもしれませんが、この時代設定は後々物語のキーとなってきます。

この映画は観賞後も考えてしまうような謎なシーンが結構多いのですが、それらの説明は省いて、映画の一番の真相に迫って解説していきたいと思います。

※以下ネタバレとなるので、観てない方は鑑賞後にご覧ください。



『シャッターアイランド』ネタバレ解説

『シャッターアイランド』には2つの説が存在します。それは「病気説」と「陰謀説」。

映画のオチ通り主人公は「病気」だとする見方と、すべては主人公を陥れるワナで病院側の「陰謀」とする見方。どっちだと思いますか?

結論から言ってしまうと、この映画は「戦争帰還兵の悲劇の物語」です。よって「病気説」で間違いありません。

映画を観ればラストは「病気だった」という終わり方なので、そのまま捉えればいいわけですが、わずかながら「陰謀」としての可能性も残っていることから「陰謀説」が浮上してきました。しかし主人公テディ(レディス)を理解すれば「病気説」で間違いない、という結論に至ります。

テディことアンドリュー・レディスは戦争後遺症のPTSDです。彼の病はすでにそこから始まっています。奥さんと子供の事件が起きるもっと前に。

彼が精神病になった原因として、奥さんと子供のことを描けば映画として十分なはずです。それだけで大変辛い過去のトラウマなのに、わざわざ戦中の想い出まで描いているのは何故なんでしょうか。それは、そこから彼の病が始まっている事を示唆しているんじゃないでしょうか。

しかもダッハウ収容所を解放したアメリカ軍がドイツの軍人達を撃ちまくるシーンは「ダッハウの虐殺」という実話です。戦争後遺症PTSDを理解しないとレディスが理解できないと同時に、映画の真相を解明できなくなるのです。

PTSDという病気はフラッシュバックや回避傾向を伴います。レディスのように。

戦後PTSDのレディスは戦争の悲惨な体験のフラッシュバックに長年悩まされていたと思います。その苦しみから逃れるように、酒に溺れるようになりました。その結果、家族をおざなりにしてしまいました。そして家族に悲劇が起こります。

彼は2重のPTSDを患ってしまったのです。だから劇中で家族と戦争が複雑に絡み合った2重のフラッシュバックが起こるのです。辛い現実の積み重ねで、心がもうこれ以上耐えられない状態になると、防衛本能によって心は別の人格を作り上げます。それがテディ保安官です。

このようにレディスの物語はずっと戦争から繋がっています。戦争による後遺症がなければ彼が酒に溺れ、家族が悲劇にあうこともなかったでしょう。戦争帰還兵の抱えるトラウマ(PTSD)はこの物語の大きなテーマです。

なので時代設定が1954年なのだと思います。その時代はPTSDがほとんど認知されていなかったんじゃないでしょうか。よってロボトミー手術を受ける羽目になってしまいます。彼が違う人格を創りだしたことは、病気ではなく防衛本能であるにもかかわらず。

ですからコーリー院長やシーアン医師の対話形式のやり方は正しい治療法だったのではないでしょうか。医学用語でいう認知行動療法というやつです。

以上のことから「シャッターアイランド」は「戦争帰還兵の悲劇の物語」なのです。そして彼を治療する物語です。これが映画の真相であり、レディスの真相です。

映画のラストでテディ(レディス)は言いました。
「モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか」

彼の心の苦しみはもう現実に耐えられないので、その心ごとなくなってしまえばいいという選択をしました。彼のこの選択を、現実逃避だと誰も責めることはできないと思います。だってそれが彼が決めた、平安を得る唯一の道なのだから。

ラストのレディスの表情は不思議と晴ればれとしていました。
それがこの悲劇の慰めになるような気がします。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

関連記事