映画『パッセンジャー』予告編映像
『パッセンジャー』作品情報
2016年アメリカ映画(原題:Passengers)。
ブラックリストにあったジョン・スペイツの脚本を「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のモルテン・ティルドゥムが監督したSF大作。
「世界にひとつのプレイブック」のジェニファー・ローレンスと「ジュラシック・ワールド」のクリス・プラットが主演を務め、宇宙船内で極限状態に置かれた男女の愛と運命を描く。他キャストにマイケル・シーン、ローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア。
『パッセンジャー』あらすじ
20XX年、258人のクルーと乗客5000人を乗せた宇宙船アバロン号は、新しい移住惑星「ホームステッドⅡ」を目指して120年の航海に出発した。しかし30年が過ぎたある日、巨大な隕石の衝突を受けシステムが故障。エンジニアのジム(クリス・プラット)だけが冬眠装置のトラブルにより目覚めてしまう。目的地まであと90年。絶望的な孤独の中、ジムはある決心をすることになる…。
『パッセンジャー』感想・評価
登場人物ほぼ二人のSF超大作『パッセンジャー』。他の惑星へ移住する目的で航行する巨大宇宙船内で起きるパニックと恋愛を描いています。
映画はほとんどの時間、男女二人のやり取りで構成されていますが、飽きさせない展開になっています。クリス・プラットとジェニファー・ローレンスの熱のこもった演技が、このトンデモ設定の映画にリアリティをかろうじてもたらしています。
興行収入も世界で3億ドルを稼ぎだし、なかなかのヒット作となりましたが、アメリカでの評価はあまり高くありません。
こういう閉鎖された空間という設定は個人的に好きですが、『パッセンジャー』の感想を言うと、大作の割にはこじんまりとした印象が否めないですね。まあずっと宇宙船内なんで仕方ないんですけどね。
ただアカデミー賞美術賞にノミネートされたように、宇宙船内部のセットは繊細で素晴らしい造形です。無機質な近未来的ハイテク感がよく表されていて、観客も孤独な宇宙に放置された気分になります。
アンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)のいるバーは、キューブリックの『シャイニング』から影響を受けているそうです。あのバーは良い雰囲気で居心地よさげですが、アーサーに質問しても碌な答えが返ってこないのは痛いところです笑。
この映画はSF恋愛映画なのですが、それよりも人生の究極の選択という意味合いが強いです。主人公の倫理観を問われる行動に賛否が分かれると思います。
さて、ここからは映画『パッセンジャー』のストーリーを簡単に解説していこうと思います(ネタバレ)。
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ストーリー解説(ネタバレ)
ジムの孤独
新たな移住惑星「ホームステッドⅡ」を目指して、宇宙船の乗客5000人は120年の旅に出ます。しかし、冬眠装置の故障によって、主人公のジムだけがなんと90年も皆より早く目覚めてしまいます。
起きたのに誰もいない!目的地まであと90年!
パニックになったジムは地球への交信を試みますが、最短の返事でも55年かかります。最悪です笑。冬眠装置に戻れないし、通信もできないし、とにかくもうこの宇宙船は欠陥ありまくりです。こんな危険なシステムでよく120年も宇宙旅行をしようと思ったものです。ありえません。
常識的に考えればあらゆるテストを重ね、あらゆる状況を想定して、宇宙旅行へ望むはずですが、ほとんど何も考えていなかったんでしょうね。緊急事態のマニュアルとかも勿論ありません笑。ホームステッド社は酷い会社です。
ジムは何とかこの状況を打開しようと、あの手この手を尽くしますがどうにもなりません。絶望的な状況の中、ジムは自暴自棄になり命を絶つことを考えますが、寸前で思い止まります。
オーロラとの出会い
1年以上が経過したある日、ジムはある美しい女性オーロラ(ジェニファー・ローレンス)の存在に気付きます。オーロラは冬眠装置の中で、ぐっすりと眠りについている。
彼女を検索したり、ビデオで彼女の人間性を知るうちに、ジムはすっかり恋に落ちてしまいます。彼女への想いはつのるばかり。そして苦悩したあげく、遂にやってはいけない行動にでてしまう。
そう、彼女を起こしてしまいます。皆さんが同じ状況でしたら、どうするでしょうか?
モルテン・ティルドゥム監督はインタビューで「同じような状況なら誰でもジムと同じことをするだろう」と言っています。私も同感です。
『パッセンジャー』を観た観客はジムの倫理違反的行動に共感できない人が多いそうですが、
同じ状況ならみんな絶対すると思いますよ。90年人間と会話できない、つまり死ぬまで人と話せない。想像しただけで恐ろしいですね。
自分がこの立場だったら、一人だけを起こすのはあんまり悲惨なので全員を起こします。危機はみんなで共有しましょう笑。そして皆で知恵をだしあって解決策を探すのです。それが一番いい。
結局ジムはオーロラを起こす方法を知っていると言い、オーロラを起こすんですが、冬眠装置から起こす方法を知ってるのに、なぜ眠る方法は知らないの笑!自分が起こしたくせに、しらばっくれるとこも面白かったです。
それからはしばらく二人の蜜月が続きます。ま二人しかいないので、当然でしょうね。
レストランデートやスポーツやゲームしたり、アークトゥルス星の凄い光景を見たり。ジムは終始ニヤケ顔でしてやったりという感じ。幸せな時間を過ごします。
でも悪事はいずれバレる。バーテンダーのアーサーが口を滑らせ、ジムがオーロラを意図的に起こした事をばらしてしまう。アーサー悪い奴め笑。
それからはお察しの通り、オーロラはジムを殺さんばかりに怒り狂います。人生を台無しにされたのだから当たり前です。オーロラが言ったように、ジムがしたことは殺人と同じです。
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ガスの登場
そんな折、重大なシステムエラーが起き宇宙船の調子がおかしい中、二人の元に救世主が!
クルーのひとりデッキチーフのガス(ローレンス・フィッシュバーン)が目を覚まします。彼によりアバロン号の故障の原因が分かり、かすかな希望が訪れます。
しかし、冬眠ポッド故障の影響で体調不良になったガスは、ジムとオーロラに宇宙船の全アクセス権をゆだね死んでしまいます。オイオイなんだそりゃっ笑!登場時間短すぎ。
アバロン号の危機
いよいよ宇宙船が崩壊寸前に陥る中、故障の原因が原子炉だと判明します。アバロン号のコアエンジンですね。
エンジン内部に放出されてない熱が溜まってしまって、それがシステム異常を引き起こしていました。
ジムは原子炉の熱を外へ放出するドアを開ける為、宇宙船外へ向かいます。ジムはドアを開き原子炉を正常に戻すことに成功しますが、熱排出の衝撃で宇宙空間へ放り出されます。
オーロラも船外に出て必死でジムを救出し、蘇生措置を行い命を救います。
ラスト
救出劇ののち二人の関係は修復し、再び愛し合うようになります。
その後ジムは代替えの冷凍ポッドを見つけ、オーロラに入るように勧めます。冷凍ポッドは一つだけなんで、一人しか入れません。これがオーロラに対するジムの贖罪でした。
しかしオーロラの最後の選択は、ポッドに入らずジムと一緒に残りの人生を過ごすことでした。オーロラすげえな笑。この後めっちゃ暇だと思うんです。
それから88年後。惑星ホームステッドⅡに到着の頃、目覚めたパッセンジャー達が見たものは、大きな木が生い茂る緑に囲まれた中央広場でした。終わり。
SF映画『パッセンジャー』は運命に翻弄され、究極の選択を突きつけられた男女二人の物語でした!もし同じ状況だったら、あなたならどうしますか?
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