「世界にひとつのプレイブック」ネタバレ感想評価 イカれた男女の恋の結末は?


「世界にひとつのプレイブック」予告編動画

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「世界にひとつのプレイブック」作品情報

2012年アメリカ映画。(原題:Silver Linings Playbook
マシュー・クイックの同名小説を原作とし、愛する人を失い心に傷を負った男女が再生していく姿を涙と笑いで描くハートフルラブコメディ。監督は『ザ・ファイター』のデヴィッド・O・ラッセル。主演は『ハングオーバー』のブラッドリー・クーパーと『ウィンターズ・ボーン』のジェニファー・ローレンス。父親役にロバート・デニーロ、母親役にジャッキー・ウィーヴァー。他ジュリア・スタイルズ、クリス・タッカー。第85回アカデミー賞でローレンスは主演女優賞を受賞した。

「世界にひとつのプレイブック」あらすじ

舞台はフィラデルフィア。妻の浮気現場を目撃して以来、躁うつ病を患う元歴史教師のパット(ブラッドリー・クーパー)は、8ヶ月間精神病院に入院していた。退院後もなお、妻との復縁を求めるパットは、接近禁止令が出ているにもかかわらず職場におしかけたりする。また感情が高ぶると抑制が効かなくなり、夜中に騒ぎを起こし両親や近所に迷惑をかける始末。そんなある日、友人のパーティーでティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出会い、精神薬の話で二人は意気投合するのだが…。

「世界にひとつのプレイブック」感想評価

「世界にひとつのプレイブック」はフィラデルフィアを舞台に精神的な病を抱えた男女の恋愛をコミカルに描いたラブコメディです。

原題の「Silver Linings Playbook」の意味ですが、「プレイブック」はアメフトの戦術書のことで、「Silver Linings(銀の裏地)」は「Every cloud has a silver lining=どんなに空が曇っていても裏側は太陽の光が輝いている」という英語のことわざから取られていて、合わせると「希望の戦術書」という意味になります。

つまり主人公達の人生は曇っているように見えるけど、その裏側には常に希望の光があるんだよってことですね。

本作はアメリカで大ヒットし評価も非常に高く、第85回アカデミー作品賞ノミネートをはじめ数々の賞を受賞。またジェニファー・ローレンスがアカデミー主演女優賞を獲得しています。

そんな「世界にひとつのプレイブック」の感想ですが、この映画は最高です。めちゃくちゃに面白い!コメディとしても面白いし、ラブストーリーとしても素晴らしい。

何しろ登場人物たちの会話が最高に可笑しくて、病気なので笑っちゃいけないんだけど、腹筋崩壊必至。パットとティファニーの掛け合いが面白すぎるし、パットの家族のやりとりも爆笑モンです。

パットとティファニーどっちも、相手の方が自分より頭がイカレテルと思っている滑稽な姿に笑い死にします。デートでシリアルを注文する人間をはじめて見ました笑。

また、ジェニファー・ローレンスの魅力もさることながら、父親役のロバート・デ・ニーロも本当にいい味を出しています!近年ではマフィアの恐いキャラよりも、こういう可愛らしい父親役が板についてきましたね。キャラクター全員が愉快で間抜けで愛おしいのも本作の魅力のひとつです。

「世界にひとつのプレイブック」はテーマを見るとスゴく重い話しなのだけど、そんなことを微塵も感じさせない軽快でコメディチックな描写によって観客に笑顔と安心を享受させ、心がジワッと暖まる作品に仕上がっています。

さて、ここからはそんな個性的な登場人物の紹介を交えながら、ストーリーの解説(結末までのネタバレ含む)をしていきたいと思います。



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ネタバレ解説

パット(ブラッドリー・クーパー)


パットは双極性障害、いわゆる躁うつ病。治療のため8ヶ月入院していた。別れた妻ニッキのことを一方的に想っており、接近禁止令が出ているにもかかわらずストーカー行為をする。

妻の浮気を目撃した時に流れていたスティービー・ワンダーの『マイ・シェリー・アモール』を聴くと、それが引き金となり激しく動揺し暴れ出す。

ヘミングウェイの「武器よさらば」を読んで興奮したり、結婚式のビデオがないと夜中に暴れたりする笑。興奮すると感情を抑制できないのが特徴。銃社会アメリカではこのような人物は危険なので、パットのように入院させられる。

そんな折、ロニー夫妻のパーティーでティファニーと出会い、精神薬の話で意気投合する。平気でティファニーに「旦那は死んでるだろ」と言う無神経なパットは、ティファニーはアバズレで自分よりクレイジーだと思っている。また、発汗効果を狙ってジョギング中はゴミ袋を着る。

ちなみにパットと同じくフィラデルフィア出身のブラッドリー・クーパーも、アメフトチーム「フィラデルフィア・イーグルス」の大ファン。

ティファニー(ジェニファー・ローレンス)


ロニーの妻ヴェロニカの妹で未亡人。ビクトリア・シークレットにランジェリーを買いに行った夫を事故で亡くす。そのショックから性依存症となり、女性を含む職場の全員と寝る。

それが原因で仕事を解雇され暇だった折、パットと出会う。ティファニーは初めからパットに好意を持ち積極的に誘うが、パットは元妻のことばかりで相手にしてくれず。

パットの元妻に手紙を渡すことを条件に、ダンスコンテストにペアで出場する約束を取り付ける。パットのことは好きだが、自分よりクレイジーだと思っている。攻撃的な性格で短気でキレやすい。姉との関係に少々問題を抱えている。

「世界にひとつのプレイブック」を観た精神科医は、ティファニーを境界性パーソナリティ障害と診断した。ティファニーは夫の死を自分の責任だと感じ、性的な自傷行為を行ったのである。深いトラウマを持つ彼女にとって、パットとのダンス練習が嫌なことを忘れさせてくれる唯一のハッピーな時間だったのかもしれない。



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パトリツィオ(ロバート・デ・ニーロ)


パットの父親。アメフトのノミ屋(スポーツ賭博)をやっていて、儲けた資金を元手にレストランを開業する夢を持つ。

パットと比べるとまともに見えるが、実は強迫神経症である。イーグルスの試合時にはテレビのリモコンの向きを揃え、ハンカチを握るといったジンクスへの強迫的なこだわりがある。

全財産を賭けるという無謀な賭けにのったり、熱くなると収まりが効かないところは、さすが親子。しかし本当はクレイジーな息子を心配する家族想いの優しい父親である。

ラストにリモコンの置き場所が変わっていたことは、彼も症状を克服したことを表している。

彼の名セリフは「サインを見逃すな」。

ラスト結末

イーグルスの試合会場で大乱闘を起こしたパット達が帰宅すると、イーグルスは試合に負けており、全財産を賭けていたパトリツィオは怒り心頭。そこへティファニーが現れ、パトリツィオの博打仲間のランディに再チャレンジを乞う。

ランディは2倍賭け、イーグルスが勝ち、尚且つパットとティファニーがダンスコンテストで平均点5点以上を出すことを条件に賭けを承諾する。

コンテスト当日、パットの元妻ニッキを姉が連れて来たことにティファニーは怒り、ウォッカを飲んでいじけてしまう。一方その頃、イーグルスが試合に勝ちパトリツィオ達は歓喜する。

バーにいるティファニーを見つけたパットが彼女を会場に連れ戻した丁度その時、出場時間となり、二人は気持ちを切り替えダンスを踊る。決して上手とはいえないダンスに会場からは失笑が起こるが、ふたりは最後まで踊りきる。

いよいよ審査員の採点がはじまり、彼らは見事に5点を叩きだした。

賭けに勝ち大喜びする家族たち。パットもティファニーと抱き合うが、ニッキを見つけ彼女の元に歩み寄る。パットが元妻に耳打ちするのを見てティファニーは悲しみに暮れ、会場から逃げ出す。

しかしパットの耳打ちは多分「自分にはティファニーがいるから君もお幸せに」とでも言ったのだろう。

ティファニーの後を追いかけ彼女に手紙を渡すパットは、「愛してる」とティファニーに告げるのだった。喜びパットを抱きしめるティファニー。

そして時を経て、「誰でもクレイジーな部分はあるだろ?」と語るパット家では、ティファニーと共に家族が幸せに過ごす日常があった。終わり。

まとめ

パットは始め、自分のことしか考えていませんでした。それにより、いっそう病は深まるばかりでした。

そしてパットが自分ではなく、他者へと目を向けた時。つまり、ティファニーを思いやった時はじめて、彼自身も救う(病を克服する)ことができました。

自分を救おうとする者はそれを失い、他者を救う者は、自分をも救うのです。

それがこの映画の根底に流れるテーマなんじゃないかと思います。

以上、心に深い傷を負った男女の恋と再生を面白おかしく描いた傑作が「世界にひとつのプレイブック」です。恋愛だけでなく家族の絆も描いた心暖まる素敵な映画でした。

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