『シングルス』予告動画
『シングルス』作品情報
1992年アメリカ映画(原題:Singles)。『バニラ・スカイ』のキャメロン・クロウが監督・脚本し、グランジ全盛のシアトルを舞台に複数の男女の恋愛模様を描いたラブコメディ。マット・ディロン、ブリジット・フォンダなど当時の若手スターが共演。パールジャムのメンバーも出演している。他キャストにキャンベル・スコット、キーラ・セジウィック、シーラ・ケリー、ビル・プルマン、エリック・ストルツ、ポール・ジアマッティ、ティム・バートン。
『シングルス』あらすじ
失恋したばかりで恋にこりごりと思っていたリンダ(キーラ・セジウィック)は、ライブハウスでスーパー・トレインの設計を夢に抱く青年スティーブ(キャンベル・スコット)に出会う。スティーブと同じ独身者専用のアパートに住むジャネット(ブリジット・フォンダ)とクリフ(マット・ディロン)の仲も進行中。そして同じアパートの住人、ベイリーはいつも皆の恋の傍観者で、デビー(シーラ・ケリー)は恋人募集中であった。
『シングルス』感想レビュー評価解説・ネタバレなし
映画『シングルス』はグランジロック全盛だった1990年代のシアトルを舞台にした青春群像ラブコメディです。
今や当たり前となった、複数の男女が絡む恋愛劇の元祖というか、はしりの映画だと思います。この映画を真似て作られた映画やドラマは多いんじゃないでしょうか。
『シングルス』を観ずしてラブコメを語るなというくらい、ラブコメディの傑作だと思います。
この映画の魅力はたくさんありますが、その一つはキャストが地味にすごいことです。
今や名のある俳優がチョイ役でたくさん出ています。『インデペンデンス・デイ』の大統領で有名なビル・プルマンや、『パルプ・フィクション』のエリック・ストルツ、『サイドウェイ』のポール・ジアマッティ。またティム・バートン監督も。みんなチョイ役だけど、結構目立ってます。
キムタクが大好きなマット・ディロンも出演しています。昔はマットと言えば、デイモンじゃなく、ディロンだったんです。カッコ良いの代名詞的な人でした。
最近はマット・ディロン全然見かけなくなったんですが、どうしてるんですかね。彼の出演作は地味だけど、いい作品が多いんですよねえ。『ドラッグストア・カウボーイ』や『カンザス/カンザス経由→NY.行き』とか。
また、この映画のブリジット・フォンダはヤバイです。魅力が半端じゃないです。アメリカでは、くしゃみをしたら「Bless you」て声をかけるのが慣習なのですが、ブリジット・フォンダのおかげでそれを知りました。
『シングルス』はサントラもすごく良いのが、また魅力のひとつです。
アリス・イン・チェインズ、パール・ジャム、クリス・コーネル、ポール・ウェスターバーグ、サウンドガーデン、スマッシング・パンプキンズなど。90年代のグランジやオルタナティヴ・ロックが作品を鮮やかに彩っています。映画の主題歌にもなっている「Waiting for Somebody」は聞いたことある人多いんじゃないでしょうか。
この映画は群像劇でありながら、キャラクターひとりひとりの個性(性格)をしっかりと描いているところが完成度を高いものにしています。
またポップさの中にも、現実的な悲劇を取り入れ、大人の恋の切なさや儚さをリアルに感じさせる演出は見事です。
この映画のメインはスティーブ(キャンベル・スコット)とリンダ(キーラ・セジウィック)です。ブリジット・フォンダとマット・ディロンがポスターで目立っていますが、彼らはオマケみたいな役割です。ですが映画に花を添えてくれる重要な存在であることは間違いありません。
リンダとスティーブを中心に物語は進んで行きます。そしてこの映画の最大の魅力こそ、この二人の物語です。
二人を通して、男女間の微妙で繊細な心情をリアルに描いています。
例えば、
スティーブとリンダが仲良くなった後、スティーブが連絡の間を空けたことで、リンダを怒らせてしまう。スティーブは少し駆け引きをしてしまった。でもリンダは駆け引きが大嫌い。ちょっとしたことだけど、二人の心はすれ違ってしまう。
こんな経験は誰しもありますよね。本当にちょっとしたことで、すれ違ってしまった経験。このような描写によって、リンダとスティーブの心情をより身近に感じることが出来ます。
また、この映画は「想い出」をとても上手に描写しています。
ふたりで見たロベール・ドアノーの写真。割れたお皿。
この「想い出の品」が、物語ではリンダを動かすのですが、それって立派な動機になるんですよね。「想い出の品」は人を動かす強い動機になるので、すごい説得力を持ってしまう。
これらのシーンは心にグッときます。恋の想い出は誰もが持つものなので、心の琴線に触れてしまう。部屋の整理をしていたり、ふとした時に見る「想い出の品」って心にグッときませんか。
他に好きなシーンは、スティーブがフェリー乗り場で、リンダの帰りを迎えるシーン。
あの二人の距離感というか、何と言葉をかけていいかお互い分からない、繊細なやりとりがたまりません。
このようにこの映画は、わたしたちの経験と重なることによって、ラブコメでありながらも
強烈に心に残る作品として昇華されるのかもしれません。
ラブコメの王道『シングルス』は、観ることを強くお勧めする映画です。