映画『セブン・サイコパス』予告動画
『セブン・サイコパス』作品情報
2012年イギリス映画(原題:Seven Psychopaths)。
『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー脚本・監督によるクライム・コメディ。出演コリン・ファレル、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン、クリストファー・ウォーケン、トム・ウェイツ、アビー・コーニッシュ、オルガ・キュリレンコ、ハリー・ディーン・スタントン。
『セブン・サイコパス』あらすじ
新作映画「セブンサイコパス」の脚本が思うように進まないマーティ(コリン・ファレル)。心配する親友のビリー(サム・ロックウェル)はネタ集めの為、勝手に「サイコパス募集」の新聞広告を載せる。そのことをきっかけにマーティは奇妙な騒動に巻き込まれていく…。
『セブン・サイコパス』感想評価
『セブン・サイコパス』は、売れない脚本家が「セブンサイコパス」という映画の脚本のアイデアを広告で募集したことから起こる騒動を描いたクライムコメディです。
フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』のような妄想と現実が入り乱れる内容になっており、劇中劇が多く描かれています。ブリティッシュノワール版『8 1/2』と言えるでしょう。
映画の冒頭で主人公たちが観ている映画は北野武の『その男、凶暴につき』です。マクドナー監督は北野武の大ファン。
その他にも、ハリー・ディーン・スタントンの出演と後半の荒野のシーンから『パリ、テキサス』を連想させたり、ウディ・ハレルソンの『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を想起させたりと、色々な映画へのオマージュが『セブン・サイコパス』には観て取れます。内容もそんな感じでごちゃごちゃしています。
本来ウディ・ハレルソンの役はミッキー・ロークが演じる予定でしたが、監督との意見の相違から降板したそうです。サム・ロックウェルが語るお墓のシーンの墓石に「Rourke(ローク)」と刻まれています。
『スリー・ビルボード』を観てマーティン・マクドナーのファンになった人は、キャストもかぶっているので、同じような完成度を期待するかもしれませんが、『セブン・サイコパス』はハッキリ言って全然面白くないという感想です。
イギリス的なグダグダしたノリに、B級ノワールがかぶさって支離滅裂になっています。タランティーノ的カッコ良さを追求したけど、纏まっていないので、単にグダグダしたグロい映画になった。
『8 1/2』のような自己満映画です。本家のほうはそれでもスルメのような味わいがありますが、『セブン・サイコパス』は監督自身もあまり出来が良くないと認めているように、駄作の部類に入ると思います。ただ『スリー・ビルボード』とテーマが似通っている部分はあります。
ということで、ここからは『セブン・サイコパス』の疑問点の解説をしていきたいと思います(ネタバレ含む)。
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ネタバレ解説と考察
なぜセブン・サイコパス?
『七人の侍』や『荒野の七人』など7人を題材とした映画は多く作られてきました。
でも、7人のサイコパスを描いた映画はなかったことからの『セブン・サイコパス』です。映画『セブン』にもかぶっています。
サイコパスが7人も揃ったら本当にヤバイ映画になっちゃうので、基本コメディとして描かれています。
クエーカー教徒とは?
クエーカーはキリスト教の一派であるキリスト友会の一般的な呼称です。平和主義で非暴力を提唱しており、1947年にノーベル平和賞を受賞しています。
『セブン・サイコパス』ではハンス(クリストファー・ウォーケン)がクエーカーであり、非暴力の設定になっているので妻をチャーリー(ウディ・ハレルソン)に殺されても復讐しませんでした。
ゾディアック事件
マーティ(コリン・ファレル)の脚本のアイデア募集に応募してきたザカリア(トム・ウェイツ)の過去の経験で描かれるシリアルキラー達は実際の事件で全て未解決です。
特にゾディアック事件はデヴィッド・フィンチャーの映画『ゾディアック』でも有名で、いまだ捜査継続中の未解決事件です。
ティック・クアン・ドック
劇中で描かれるベトナム人僧侶はティック・クアン・ドックという実在の人物。
ベトナム戦争中の1963年に仏教を弾圧した政権に抗議するため、サイゴンのアメリカ大使館前でガソリンをかぶり、座禅を組んだまま焼身自殺しました。この事件は全世界に報道され衝撃を与えました。
まとめ
『セブン・サイコパス』は色々なものを詰め込んで、それぞれのエピソードが一つに繋がらずバラバラなので、映画として支離滅裂な印象になっています。
中途半端なギャグが全然面白くなく、行き過ぎたグロ描写も不快です。豪華キャストの壮大な無駄使い映画が『セブン・サイコパス』です。
ただ『スリー・ビルボード』で描かれたテーマのぼんやりとした原型は見て取れるので、見所としてはその辺りでしょうか!