映画『スマホを落としただけなのに』予告
作品情報
2018年日本映画。
志駕晃の同名デビュー小説を「リング」の中田秀夫監督が映画化したミステリースリラー。
キャスト:北川景子、田中圭、千葉雄大、成田凌、バカリズム、原田泰造、要潤、高橋メアリージュン、筧美和子、酒井健太(アルコ&ピース)、北村匠海ほか。主題歌はポルカドットスティングレイ「ヒミツ」。
感想評価
前半は映画『スマホを落としただけなのに』の感想と評価、それ以降はあらすじ(ネタバレ)の解説と映画に隠された重大な秘密を明かしますので是非最後までご覧ください。
『スマホを落としただけなのに』は、スマホを落としたことからサイバー犯罪に巻き込まれる様を描くサイコスリラーです。興行収入は19.6億円のスマッシュヒットとなり、既に2020年に続編の公開が決まっています。
監督はホラー映画を撮らせたらピカ一の日本を代表する映画監督中田秀夫。原作は2017年発売の志駕晃による同名ミステリー小説です。また、漫画版もあります。
この小説はスマホやSNSという身近なテーマで、誰にでも起こり得る恐怖を描いているので
映画化のオファーが殺到したそうですよ。
誰にでも起こり得るというのはミステリーにとって結構重要だと思います。中田監督も「あるある」のシチュエーションを大切にした、と語っていました。「あるある」は観客にとって恐怖がより身近に感じ、より増します。
近年、スマホやSNSを題材とした映画はとても増えていますよね。ただ、それは時代を反映しているだけなので、これからももっと増えるだろうし、それが映画の当たり前になってくるでしょう。特にミステリー系では、とても話を広げやすい魅力的な題材だと思います。
そんな映画『スマホを落としただけなのに』の感想ですが、残念なことにとっても古臭く退屈で、恐さを微塵も感じないスリラーでした。
題材は新しいのに、ストーリーが古いんですね。本当に昔からある何度も何度も使い古された物語です。
また、北川景子と田中圭がどう見てもカップルに見えなかったのも辛いです。こんなにぎこちないカップルはいません。「はい、今回はカップルを演じてくださいねー」というのをまざまざと見せつけられた感じです。
あとは、犯人のシーンで毎回かかる変なハワイアンミュージックですが、あれなんですか笑。あの音楽のせいでミステリーの雰囲気が台無しにされてしまいました。あれは完全な失敗です。犯人の不気味さがかき消されています。
得体の知れない不気味さを表現するなら、無音でいいんですよ。無音で。無音の中でのマウスのカチッカチッというクリック音とか、キーボード音が不気味さを助長しますよね。
ドキドキを感じるシーンもひとつもなく、2時間近くもあるので、早く終わってくれないかなと心の中で叫びました。スマホ落とすんじゃねー!って笑。
個人的な評価としては、ハリウッド・ミステリーの超劣化版です。
しかし、それはミステリーとして観た場合の評価です。
さて、ここからは『スマホを落としただけなのに』のあらすじを結末まで解説を交えながら紹介していきましょう。さらに見方が180度変わってしまう、この映画に隠された重大な秘密も明かしちゃいます!
ネタバレあらすじ
スマホをタクシーに忘れる
大事なプレゼンに遅刻しそうな東光電器のサラリーマン富田誠(田中圭)は、焦りからスマホをタクシーに置き忘れてしまう。
しかし、富田の恋人である派遣社員の稲葉麻美(北川景子)の元に、スマホの拾い主から連絡があり、スマホは無事に返ってきた。
その晩、麻美ことあさみんと富田はプラネタリウムでデート。富田はプロポーズするが、麻美はなぜか返事をはぐらかすのだった。
ちなみに、富田の好きな映画のセリフ「太陽が爆発しても8分間僕らは何も知らない」は、映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のセリフです。
ある日、二人がイタリアンでデートしている時、追跡アプリで二人の居場所を追っていた男がいた。その男は富田のスマホを拾った男だった。
男は美しく長い黒髪の麻美を気に入り、富田のスマホを乗っ取りストーカー行為を行っていた。
その頃、毒島(原田泰造)をはじめとする神奈川県警は、山中にて髪を切り取られた5人の女性の遺体を発見。この猟奇的事件についての捜査本部が設置され、元プログラマーでIT会社から刑事に転職した新人の加賀谷(千葉雄大)と毒島は、早速捜査を開始する。
毒島達はサイバー犯罪を繰り返すクラッカーの男を捕まえるが、事件とは無関係のようだった。
このシークエンスを挿入したのは、加賀谷がサイバー犯罪に詳しく、頭の切れる男だと紹介する為です。千葉雄大は今後の展開のキーになりますからね。原田泰造なんもしてねぇ笑。
一方、富田はスマホを拾った男によって、勝手に高額商品をクレジットカードで買われる
被害を受けていた。
警察は行方不明の女性が事件と関係があるとにらみ、その母親に事情聴取を行った。DNA検査の結果、被害女性のひとりだと判明する。
また、その被害女性の携帯電話を持っていた犯人は、富田のスマホを拾った男だった。警察が追う事件と、富田と麻美を監視する謎の男との関連がここで示される。
そんなことは露知らず、デートを楽しむ麻美達だったが、富田が「あさみんの実家に行きたい」と言った際、家庭環境が複雑な麻美は露骨に嫌な顔をし拒否する。さらに、怒って帰ってしまうのだった。
この会話で麻美の過去の秘密に対する伏線が張られていますね。
エスカレートするサイバー攻撃
富田との関係で麻美が悩んでいる頃、謎の男は麻美のSNSのソーシャルブックも乗っ取ってしまう。
麻美は富田の先輩の小柳(バカリズム)のしつこい誘いについて、友人の加奈子(高橋メアリージュン)に相談する。加奈子は富田君に相談したほうがいいよ、と言う。
麻美が富田に連絡しようすると、誰かから一通の画像メールが届く。それは富田が若い女性と楽しそうに映っている写真だった。
その晩、写真の女性について富田に激しく詰問する麻美だったが、その子は家庭教師をしていた時の教え子で、長い間連絡も取っていない事が分かり仲直りする。
ある日、麻美は加奈子のデートに付き合わされた。その時、相手方の付き添いが大学時代の先輩・武井(要潤)だったことに麻美は驚く。
武井と麻美には因縁があった。それは麻美の学生時代のルームメイト山本美奈代(桜井ユキ)
についてだった。当時美奈代と武井は交際しており、二人が別れた後、美奈代は自殺していた。
美奈代のことを武井に聞かれた麻美は、激怒して帰ってしまうが、追ってきた武井に無理やりキスをされる。
そんな中、富田のスマホがロックされ身代金を要求されるという問題が起きていた。麻美は知り合いの戸部というセキュリティーのプロに連絡する。
富田と麻美は早速、戸部の部下の浦野(成田凌)と会い、スマホのロックを解いてもらう。
麻美は先に一人で帰宅するが、その帰り道、また小柳からメールが来る。小柳は近くに引っ越してきて、さっき麻美を見かけたと言う。
少し恐怖を感じる麻美に今度は、先ほど居た店で、富田が元教え子の天城千尋(筧美和子)
と一緒にイチャついてる動画が送られてきた。
直ぐに麻美が店に戻ると、富田が千尋と一緒にいた。麻美は無言のまま店を後にした。
誤解を解こうと富田が追ってきたが、麻美は聞く耳を持たない。なので「自分はどうなんだよ?」と、麻美と武井がキスしている動画を見せるのだった。
動揺する麻美に富田は「俺の話は信じないくせに、自分の話は信じろっていうの?」と怒って帰ってしまう。
犯人の正体
その頃、謎の男は武井のソーシャルブックにも侵入。そこで山本美奈代の写真を発見する。美奈代の背中には三角形のホクロがあった。麻美の背中のほくろと全く同じように。
さらに麻美のソーシャルブックも操り、武井と麻美のキス動画を拡散させ、武井のゲスッぷりも垂れ流した。
そのことで武井から怒りの連絡があり、困った麻美は再び浦野に会い、スマホのロックを解いてもらう。
浦野は富田のスマホを拾った男が一連の騒動の犯人だと教えてくれた。そして機転を利かせ、この男の住所を警察に通報した。
その男の家に毒島と加賀谷が踏み込むと、既に男は命を絶っていた。さらに5人の被害女性たちの写真とスマホが見つかった。
しかし加賀谷は、この男は犯人じゃなく犯人に仕立て上げられたと見破る。
一方、浦野とお酒を飲んでいた麻美は、浦野が突然美奈代のことを話し出したのでビックリする。浦野は態度が徐々に豹変し、麻美と山本美奈代の秘密を知っていると告げる。
怒りに震えて立ち上がる麻美だが、お酒に服まれたクスリによって眠り込んでしまうのだった。
ラスト結末
麻美が目を覚ますと、両手両足を鎖で拘束されていた。目の前には浦野がいて、富田のスマホを拾って全てを仕組んだ犯人だと知る。
浦野はサイコキラーだった。また警察が追う猟奇的事件の犯人でもあった。
浦野は過去に母親から受けたトラウマにより、母と同じ長い黒髪の女性を襲っていたのだった。
なす術のない麻美だったが、麻美と連絡が取れず不審に思った富田が、追跡アプリを使い
静岡の監禁場所まで助けに来る。一方、加賀谷たち警察も犯人に迫っていた。
監禁場所の遊園地から逃げ出そうとする二人に、浦野が襲い掛かり、富田は足を負傷する。そして浦野は、麻美の秘密を富田に打ち明けろと迫った。
意を決した麻美はすべてを洗いざらい告白した。
稲葉麻美の正体はなんと山本美奈代だった。
学生時代のルームメイトだった稲葉麻美が借金を苦に命を絶った際、迷惑をかけた美奈代に、自分の人生をあげると約束したのだった。
美奈代は辛い過去を清算し、整形もして稲葉麻美に成り代わった。
告白が終わると、浦野が突然襲い掛かってきた笑。
しかし丁度いいタイミングで加賀谷たち警察が到着し、浦野は捕らえられた。
その後の取調室で浦野は、なぜ自分を追跡できたのか信じられないという様子だった。だが、加賀谷を見て理解する。「あなたは僕と同じ種類の人間だ」。
それから日が経ち、ひとりプラネタリウムにいる麻美の前に富田が現れる。麻美の全てを受け入れた富田は、再び彼女にプロポーズするのだった。終わり。
まとめ解説
以上が映画『スマホを落としただけなのに』ですが、いかがでしたか?恐かったですか?
はっきり言って全然恐くないですよね。恐いと感じた人は「この映画はホラーなんだ、だから怖いんだ」と「ホラー=怖い」という前提で見てしまっていませんか。
先入観というのは怖いものです。この映画で唯一、恐かったとすればその先入観を引き起こさせる人間の脳でしょう。
映画をよーく見てみてください。犯人は怖かったですか?成田凌の動きは可笑しくなかったですか?私なんか大爆笑してしまいました。
現代社会へ警鐘を鳴らしてる真面目な映画だ!なんて思ってたら見当が全然外れてしまいますよ。
というか、恐くないのには理由があります。はい、それがこの映画に隠された重大な秘密なのです。
それは、この映画はスリラーなんかじゃなく、コメディだからです!
コメディスリラーというか、ギャグスリラーです。ギャグミステリーと言ってもいい。
つまり、相当ふざけています。かなり笑いを入れています。本当です笑。
もし『スマホを落としただけなのに』がシリアスなミステリーだとしたら、なぜキャストにお笑い芸人を3人も入れたんですか?
原田泰造が刑事なんて絶対に狙ってますよね。バカリズムなんているだけで笑っちゃいますよ。バカリズムの笑いはシニカルなんだから、ギャグスリラーのこの映画にはぴったりです。
なぜ犯人の部屋にハワイアンが流れ、成田凌は面白い動きをするのでしょう?「うへへへへ」みたいな。あんな奴いますか?ふざけてますよね笑。違和感を感じたはずです。
また、千葉雄大がお母さんを想い出し事情聴取中の女性の背中をスリスリして「ちょw何しとんねん!」とか、金髪女性を好きな男だったんで犯人じゃないとか。完全にギャグです。
さらに北川景子の顔芸もあるし、ラストの「ふっふっどうやら正体がばれちまったみたいだなあ」的な種明かしなんて、吉本新喜劇にもよくあるコントです笑。
決定的なのは、中田秀夫監督の前作『終わった人』はコメディなんです!
推測するに、中田監督は前作が自身初のコメディ映画だったので、味を占めたんじゃないかと思います。コメディを撮った次が、また怖い系映画に戻ったので、今回はただ恐いだけじゃなくコメディ要素を入れようと考えたはずです。
だから意図的に笑いを入れています。配給会社にバレないように笑。確信犯です。というわけでこの映画の真犯人は中田秀夫です!笑。
そんなわけで、2回目の『スマホを落としただけなのに』の鑑賞は、ギャグスリラーとして180度変わった見方を楽しんでください。
探せばもっとコントのネタを取り入れている場面が見つかると思うので、是非面白いシーンを探してみてはいかがでしょう!
↓映画『スマホを落としただけなのに』はコチラでご覧になれます。
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