『ちょっと今から仕事やめてくる』予告編
『ちょっと今から仕事やめてくる』作品情報
2017年日本映画。
北川恵海によるベストセラー小説を映画化。ブラック企業を題材にした人間ドラマ。監督は「八日目の蟬」の成島出。出演福士蒼汰、工藤阿須加、黒木華、小池栄子、森口瑤子、吉田鋼太郎。
『ちょっと今から仕事やめてくる』あらすじ
ブラック企業に勤める営業マン青山隆(工藤阿須加)は営業成績が上がらず、部長(吉田鋼太郎)の叱責やプレッシャーに、日々耐える苦しい毎日を過ごしていた。ある日仕事帰りに、心身共に衰弱した隆は電車に飛び込みそうになる。その時、隆は間一髪のところで謎の男ヤマモト(福士蒼汰)に助けられる。関西弁を話すヤマモトは隆の同級生と名乗るのだが…。
『ちょっと今から仕事やめてくる』ネタバレ感想評価と解説
前半に感想と評価。後半に疑問点の解説(ネタバレ)をします。
福士蒼汰主演で贈る映画『ちょっと今から仕事やめてくる』は、現代日本の大きな問題であるブラック企業を題材に、生きるとは?仕事とは?を問うたヒューマンドラマです。重いテーマですが、それを感じさせないソフトで爽快な作りになっています。
北川恵海のデビュー作である原作は70万部越えのベストセラー小説となりました。フィクションではあるのですが、原作者の実体験も含まれているとのことです。
『ちょっと今から仕事やめてくる』の感想は、普通にいい映画でした。良作です。
会社で働いた経験のある人なら、グサグサと胸に突き刺さること必至でしょう。映画の中の「ブラック企業」は誇張されていますが、大なり小なり日本企業のほとんどが、この様な体質を持っていると思います。中には映画以上の酷いところもあるようです。
ドラマとしてはベタだし、後半に言葉で一気に説明してしまう欠点はありますが、現代社会が抱える深刻な問題を扱っているという点で、大変意味のある映画だと思います。というか、この映画を観て救われる人は結構いるんじゃないでしょうか。
ブラック企業に勤める人は、次の仕事や生活面での不安があり、なかなか辞めれないかもしれない。でも、主人公の母の言葉「人生なんて案外どうにかなるもんよ」は、経験から出るとても心強い言葉です。本当に何とかなるもんです。自分もそういう経験があります。隆のように心が殺されてしまうような場所は、早く脱出して次にいきましょう。
自分のお気に入りは、隆がスキップしながらカバンをブンブン回し「ヒャッホー!」って喜び叫ぶシーン。あれが希望に輝いている人間の姿でしょ。隆の本来の人間性が回復した瞬間。あの生き生きとした姿こそ、人間でしょ。
そういったことで、ここからは映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の疑問点の解説と、ブラック企業について少々触れたいと思います。
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ブラック企業
ブラック企業は簡単に言うと、奴隷システム。個人的経験も踏まえると、映画に似たような会社は非常に多いです。
例えば、
ワンマンオーナー(部長・課長)による独裁。皆の前で大声でなじる。1つのミスを何日も何度も責める。有給を取ると怒られる、嫌味を言われる。手柄を上司が横取り。残業代なし。などパワハラ・モラハラ当たり前の会社なんて今でも沢山ありますね。
ブラック企業の常套手段は、自尊心の破壊です。
その人間を罵倒するだけではなく、隆のように「お前は周りに迷惑をかけている」という言葉をよく使います。真面目で和を大切にする日本人は、この悪魔の言葉によって、自分が悪いんだと自分を追い込んでしまう。
日本人が休みをあまり取らないのは、周りに迷惑がかかる、と考えているからですよね。でもそれは労働者の責任ではなく、人件費を削るためギリギリの人材しか置かない企業の責任ですよ。騙されないでください。
わたしたちは学校で、みんな黒板を向き、先生の言う事だけを聞くように教育されてきました。和を乱すな。空気を読め。前を倣え。右向け右。学校でディスカッションする習慣がないのは大問題です。
このようにブラック企業は、日本の社会構造システムから自然に生まれたものなのです。日本社会の病理の現れです。空気なんて別に読まなくていいじゃん。自分の意見を語ろうぜ!シェキナベイベー!誰?笑。
またブラック企業は、そのやり方自体が生産性を著しく低下させるという事も理解できない愚かな集団です。社員にのびのび働かせた結果、売り上げが爆上げした会社が確かありましたよね。
「ブラック企業」という人の心を殺す奴隷システムが、一日も早く改善されることを願うばかりです。
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喫茶店にいたのは幽霊?
隆が山本に連れていかれた喫茶店で、席の後ろに女性の幽霊のような人が映ります。
これは、山本を幽霊とミスリードさせる為の演出上の仕掛けと、隆の精神状態が衰弱している表れです。幻を見てしまうくらい、隆は精神状態がギリギリなのです。
何故ヤマモトは純を名乗ったのか?
隆と同じような状況であった純の存在を、知って貰いたかったからだと思います。山本純を検索して見つけてもらうことで、隆の考えを変えさせたかった。
本名の優を名乗ると、ただの実在するバヌアツの日本人教師が見つかるだけなので。
ヤマモトは何を象徴するのか?
ヤマモトは「希望」を象徴します。なので人間でも天使でも何でもいい。この映画では勿論人間ですが。
だから山本のような友達がいなくても安心してください。希望という友達がいるので。希望を見失っていた隆が、山本(希望)を見つけた時、彼の人生は輝きを取り戻した。
「希望はなくならない。見えなくなってしまうだけなんだ」
何故バヌアツなのか?
バヌアツは南太平洋のオーストラリアの東側に位置する国。「天国に一番近い島」で有名なニューカレドニアの隣です。だから、希望という天国の入り口。しかも世界で一番幸福な国にも選ばれています。
つまり「人が輝ける場所」の象徴。それは職場でも学校でも何処でもいい。隆は隆の「バヌアツ」をこの先見つけていくと思います。
『ちょっと今から仕事やめてくる』は、すべての働く人々に観て欲しい映画です。周りに疲れている人がいたら、是非おすすめして欲しいと思います!