『複製された男』ネタバレ感想と考察 世にも不思議なミステリー映画


『複製された男』予告編動画

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作品情報

2013年カナダ映画。(原題:Enemy)
ポルトガル唯一のノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説『複製された男(原題:The Double)』を『ブレードランナー2049』『メッセージ』の奇才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化した一風変わったミステリー。ジェイク・ギレンホールが瓜二つの男を1人2役で演じている。共演メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ。

『複製された男』あらすじ

大学で歴史を教えているアダム(ジェイク・ギレンホール)。ある日、何げなく映画のDVDを観ていた彼は、劇中に出てくる俳優が自分自身とうり二つであることに驚く。彼がアンソニーという名だと知ったアダムは、さまざまな手を尽くして彼との面会を果たす。顔の作りのみならず、ひげの生やし方や胸にある傷痕までもが同じであることに恐怖を抱く…。

『複製された男』感想評価

巨大蜘蛛が街を徘徊し、自分に瓜二つのクローンのような男が現れる。そして終始画面に漂う不穏な空気。

これはSFだ!と思うかもしれない。きっとSFに違いない。主人公は大きな陰謀に巻き込まれている!

観客の一定数はそう思うだろう。そして最後まで見て「やっぱりSFだった」と思うかもしれない。ヒッチコックというのか、カフカというのか。実に好奇心をそそられる不思議な映画だ。

そして難解だけど、実に巧みに物語を魅せる良作でもある。難解だけど、面白い。

複製された男』を一言で表すなら、映画のオープニングの言葉がまんま当てはまる。

“カオスとは未解読の秩序である”

そう、これはカオスな映画だ。映画は始めから、これからカオスが始まりますよ~と宣言している。

しかし物語に含まれる暗喩(ヒント)を解き明かせば、実は秩序だっているのが理解できる。秩序だっているどころか、すごく単純な映画である。本物のカオスは未解読だけど、この映画のカオスは解読できる。

まずは、この映画のカオスの根源であるジェイク・ギレンホール演じるアダムとアンソニーを解説・考察したい。

※ここからネタバレ解説になります。



『複製された男』ネタバレ考察

アダムとアンソニーはクローンか?

アダムとアンソニーは瓜二つだ。顔も声も身長も体重も身体の傷跡まで同じ。

この二人は一体何者なんだろう?

観客はこの謎を抱えながら、最後まで物語は進むけれど。ん?結局最後まで、この二人が何故瓜二つなのか説明されない。

答えを言うと、アダムとアンソニーは同一人物である。
多分、二重人格である。

主人格はアダムで、アンソニーはアダムが作り出した、もう一つの人格。
だから役者という設定である。

アダムは真面目で、アンソニーは浮気者というキャラだ。しかし、アダムはアンソニーに妊娠した嫁(サラ・ガドン)を押し付け、自分は愛人(メラニー・ロラン)と楽しくやっている。

ここにカオスが生じる。どっちが真面目でどっちが浮気者なんだ?と。

アダムは真面目なのに、愛人と浮気してるじゃないか。アンソニーのほうが真面目だ、と。

結論からいうとどっちもアダムだ。アダムは真面目であり、浮気者なのだ。

だから大学構内で、二重人格に気づいた嫁が愕然としたのである。

蜘蛛は何を意味する?

アダムの夢の中や現実にも唐突にあらわれる蜘蛛。あのクモは一体何なのだろう?

蜘蛛が意味するものは、罪の意識だ。

秘密クラブはアダムの浮気願望の象徴で、そこにも蜘蛛はいた。そして蜘蛛の夢にうなされていた。
蜘蛛が罪の意識を表しているのは、歴然としている。

アンソニーは本当に事故にあった?

アダムは浮気による罪の意識でいっぱいで、愛人との関係を終わらせたいと思っていた。
愛人が指輪の跡に気づき激高し、車で送る途中で事故に合う。

あのシーンは妄想であり、愛人との関係が終わったことの暗喩である。
ついでにアンソニーの人格も消滅した。

よって車の事故は、アダムの妄想である。

結末

ラストは嫁がクモになっていて、唐突に終わる。

クモは罪を表しているから、嫁はその罪(浮気)に気づいていることの暗喩だと思われる。

物語のはじめの講義のシーンで、アダムは支配に関する講義を2回もしていた。それはまるで蜘蛛の糸によって、アダムのこれからの人生が嫁に支配されることを象徴しているようだ。

愛人と別れた後でさえ、アダムに届いた秘密クラブのカギ(浮気願望)を嫁はすべてお見通しなのである。

まとめるとこの映画は、嫁が妊娠中に浮気をした男が再び嫁の元に戻った話し。
それだけの単純なストーリーだったのである。決してSFではない笑。

現実と妄想を織り交ぜ、男の心の内側をあぶりだした秀作である。その単純な話を、ここまで完璧なカオスに仕上げたドゥニ・ヴィルヌーヴ恐るべしである。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督他作品

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