『エル ELLE』ネタバレ感想と解説 新しい女性像を描いた問題作!


映画『エル ELLE』予告動画

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作品情報

2016年フランス/ベルギー/ドイツ映画(原題:Elle)。
フィリップ・ディジャンの小説「Oh…」原作、『ロボコップ』『氷の微笑』のポール・バーホーベンが監督を務めたエロティックサスペンス。本来は英語で撮影される予定だったが全編フランス語に変えられた。フランスのアカデミー賞であるセザール賞作品賞、ゴールデングローブ最優秀外国語映画賞受賞。主演のイザベル・ユペールはミシェル役でゴールデングローブ主演女優賞をはじめ数々の賞を受賞している。他キャストにロラン・ラフィット、ヴィルジニー・エフィラ、アンヌ・コンシニ、クリスチャン・ベルケル、ジョナ・ブロケ、シャルル・ベルランなど。

『エル ELLE』あらすじ

ゲーム会社の社長を務めるミシェル(イザベル・ユペール)は一人暮らしの自宅で覆面の男に襲われる。その後も、送り主不明の嫌がらせのメールが届き、誰かが留守中に侵入した形跡が残される。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲を怪しむミシェル。父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察に関わりたくない彼女は、自ら犯人を探し始める。だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった。

『エル ELLE』ネタバレ感想と解説・評価

映画『エル ELLE』は、強くて大胆不敵なひとりの女性を描いた物語です。「ELLE」の意味はフランス語で「彼女」です。ホラーっぽいポスターですが中身は全然ホラーじゃないです。

ユーモアと皮肉たっぷりのブラックコメディであり、女性を応援する映画となっています。イザベル・ユペール演じるミシェルは、毅然としていて、クールで、何事にも動じない気概のある女性でカッコ良いです。イザベル・ユペールの気品が溢れています。

ポール・バーホーベンはSFだけじゃなく、強い女性が主人公の映画を好んで撮る監督で、『エル ELLE』もそういった流れを継ぐものです。

今回の主人公ミシェルによって、定型枠を超越したこれまでにない新しい女性像を創り上げました。世界的な評価としては賛否両論を巻き起こした作品です。

強い女性と対比するように、出てくる男どもはみんな情けなくて変態でクズばかりというのも、ブラックユーモアが効いていて面白いです。感想として、とても不思議な魅力がある、あらゆる枠を飛び越えた秀作だと思います。

物語はいきなり、ミシェルが自宅で男に押し入られレイプされるところから始まります。男が立ち去った後ミシェルが何をしたかというと、泣き叫ぶわけでも、警察に連絡するわけでもなく、寿司を注文します。そして息子と一緒に寿司を食べ、何事もなかったように翌日会社に出勤します。

ここで観客は度肝を抜かれます。なんだこのひと!!って。何事にもまるで動じない恐ろしいメンタルの持ち主だな、と。しかし彼女はレイプに対して動じていなかったわけではないんですね。あまりにも毅然としているので分かりにくいですが。

警察に連絡しなかったのは、過去のトラウマから警察を全く信用していないので、自分で犯人捜しを始めるからです。犯人捜しをするということは、許せない!復讐してやるって思ってるわけです。自分の世界を持っているミシェルは、泣いたり嘆いたりという一般的な型にはまった行動をしないだけで、ちゃんとレイプに対して怒ってるわけです。型にはまらない行動なので観客は度肝を抜かれるんですね。

泣いたり嘆いたりしない理由に、ミシェルはレッテルを貼られるのが一番嫌い、ということもあります。彼女は親父が連続殺人犯だったということもあり、「連続殺人犯の娘」というレッテルを散々世間から貼られてきました。レストランで食事をしてるといまだに、暴言を吐かれて食事をぶっかけられたりします。

「連続殺人犯の娘」というレッテルは、ミシェルを個人として全く見てないんですね。そういうレッテルを貼り続けてきた世間に対して、ものすごい怒りがあるわけです。こんな事例は現在でもたくさんありますよね。加害者家族に対して嫌がらせをする人々はたくさんいます。

だから「レイプ被害者」というレッテルも絶対に貼られたくないわけです。

ミシェルにとって「私」は「被害者」じゃなく、「私」は「私」なんですね。「私」という存在が違うものに置き換わったら、それはもう「私」ではないわけです。

だから友人に被害を告白したときも、心配されて=被害者扱いされて、言うんじゃなかったと言います。普通なら「私は被害者」だから慰めて!になるのですが、ミシェルはそれを拒否します。まあ変わってますよね笑。車で事故った時も、救急車じゃなく友人を呼ぶのもそういうことです。徹底しています。



こういう型にはまらない独特の世界を持っているのがミシェルです。彼女の世界の形成は、幼い頃のトラウマがすごく影響しています。

ミシェルは性に対しても奔放で、周りの男全員と寝ているような女性です。これはわざと挑発的にそのように描いています。というのも観客によっては、こんな女だからレイプされるんだよ、と観る人々もいるわけです。

ミシェルが性に奔放だからといって、レイプされていいわけがありません。

『エル ELLE』では、意図的に主人公をそういう女性に見せることによって、偏見を持つ人々に問いかけているわけです。レイプ犯罪の根深い問題として「セクシーな格好をしてるから悪い」とか「誘うような仕草をしたのが悪い」とか被害者を責める口調が世界には腐るほどあるわけで、それに対する挑発なのです。

ミシェルがレイプ犯と楽しむような振る舞いは、すべて復讐のためです。本当は心からレイプを憎んでいたのです。だからきちんと復讐を成し遂げます。ミシェルの行動は最初から最後まで一貫していたのでした。

また、ローマ法王を幾度も見せるのは、性犯罪を長年隠してきたカトリックへの皮肉です。レイプ犯の妻も夫の犯罪を隠してきました。妻とカトリックをかぶせていますね。ポール・バーホーベンも言っているように批判を込めています。

道徳や倫理を無視した背徳的に見えるミシェルは、実はいちばん道徳や倫理を愛していたんじゃないかと思います。行動は突飛ですが、言ってることは極めてまともなことを言ってるのが面白いですね。例えば息子に対してとか、親に対してとか。

『エル ELLE』は、道徳や倫理を振りかざす世界に対して、それらが一番ないのはお前たちだろ?って、道徳や倫理を壊すことによって問いかけた映画だと思います。

今だかつてない新しい女性ヒロインを是非ご覧になって欲しいと思います!

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