映画『淵に立つ』ネタバレ感想と考察 カンヌ受賞作!


『淵に立つ』予告編動画

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作品情報

2016年日本・フランス合作映画(英題:Harmonium)。
「ほとりの朔子」の深田晃司監督・脚本による家族の愛と傷を鋭く描いた人間ドラマ。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞。出演は浅野忠信、筒井真理子、古舘寛治、太賀、三浦貴大、篠川桃音、真広佳奈。主題歌にHARUHIの「Lullaby」。

あらすじ

小さな金属加工工場を営む鈴岡家は、夫・利雄(古舘寛治)、妻・章江(筒井真理子)、10歳の娘・蛍(篠川桃音)の三人家族。平穏な毎日を送るごく平凡な家族の前にある日、利雄の旧い知人で、最近まで服役していた八坂草太郎(浅野忠信)が現れる。利雄は章江に断りなくその場で八坂を雇い入れ、自宅の空き部屋を提供する。章江は突然の出来事に戸惑うが、礼儀正しく、蛍のオルガンの練習にも喜んで付き合う八坂に好意を抱くようになるが…。

感想・評価・考察・ネタバレ多少あり

「あの男が現れるまで、私たちは家族だった」

というキャッチフレーズで、大体展開が読めてしまうかもしれない映画『淵に立つ』を観賞しました。展開が読めると言いましたが、実はあまり読めないので安心してください。

この映画は一言でいうと、浅野忠信が恐い!!です。

「あの男」を演じている浅野忠信です。刑務所帰りの八坂って男です。
八坂の不気味な佇まいは、浅野忠信に任せて間違いありません。

礼儀正しく丁寧な言葉づかいの裏に潜む狂気。まさに狂気です。

こいつ絶対何かしでかすやん!という雰囲気をプンプンに醸し出しています。

穏やかかと思いきや、突然ドスの利いた声で「おめぇは本当にちっせえヤツだな」と乱暴な言葉を吐きます。ガクブルですね。ビクッとして利雄のように直立不動になりました。

キャッチフレーズを見ると、この映画はスリラーなのかホラーなのかと勘繰りたくなりますが、ふたを開けてみると、家族をテーマにした暗くて重いお話しです。

ちなみに「淵に立つ」の意味は“人間を描くということは崖の淵に立って暗闇を覗き込むような行為だ”ということから付けたそうです。なんのこっちゃ笑。

暗い作品ですが、映画の出来としてはなかなか唸るものがあります。

何かちょっと新しい日本映画を観たな、という感じで衝撃的でした。さすがカンヌで賞を取っただけはあります。ただの映画ではありません。

家族の行く末に心を深くえぐられ、揺さぶられることと思います。

しかしこの家族、なんか少し変です。

夫は妻のことを全然気にしないし、妻も夫のことをあまりよく分かっていない。倦怠期とは言えない、しらじらしい空気が常にこの家族を包んでいます。

本当はお互いをよく知らない男女が、夫婦という体裁で、ただ長年一緒に住んでいるだけ。という印象を受けました。

深田晃司監督が「家族とは不条理だ」と語っていたように、あえてこういう家族像を描いたのでしょう。

その家族の前に刑務所帰りの八坂が現れ、家族を翻弄し、愚弄し、破壊していきます。家族が崩壊する様は、本当に心が重くなりました。



おおよその点で、この映画はいい出来なのですが、いくつか気になる点があります。

それは、この映画には救いがないところです。

この家族はあまりにも疲弊してしまって、絶望しか感じないのです。

妻の章江は敬虔なクリスチャンという設定ですが、クリスチャンという割には、彼女からは希望がまるで感じられません。信仰というものは、希望そのものであるはずなのに。章江は、じつは始めから信仰を持っていないかのような振る舞いです。

この映画のように、絶望で終わってしまうところが、日本映画の限界点な気がします。

救いのない現実を見せられて、これが現実なんだよ。ってぽい投げされても、
「は?何言ってんのお前」です。それじゃあダメだろ、それじゃあ。

真の希望というものは、圧倒的な絶望の中にこそより強く見出されるもの、なんじゃないでしょうか。

それを完璧に描いた映画がマーティン・スコセッシの「沈黙 サイレンス」です。こっちのほうがもっと酷く、もっと悲惨なのに、なぜか希望を感じます

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また、障害に対してあまりにも重く描きすぎなのではないでしょうか。

監督が、星野富弘さんという素晴らしいアーティストを知っていれば、
この映画はきっと、希望と再生のある、素敵な映画になったんじゃないかと思います。

この家族の結末はどうなるのか?是非ご覧になって、みなさんそれぞれが感じてください!

『淵に立つ』DVDはこちら

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