『美しい星』ネタバレ解説と感想 異色SF映画!


映画『美しい星』予告編

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『美しい星』作品情報

2017年日本映画。
三島由紀夫の同名SF小説を「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督が映画化したSF映画。時代設定を現代に置き換え、環境問題をテーマに宇宙人を自称する家族の行く末を描く。出演リリー・フランキー、中嶋朋子、橋本愛、亀梨和也、羽場裕一、友利恵、佐々木蔵之介。

『美しい星』あらすじ

お天気キャスターの父・重一郎(リリー・フランキー)、専業主婦の母・伊余子(中嶋朋子)、フリーターの長男・一雄(亀梨和也)、大学生の長女・暁子(橋本愛)の4人家族の大杉家は、父親の誕生日を祝うため高級イタリアンレストランに集っていた。しかし父は不倫相手と電話し、長男は遅刻したりと、一家はバラバラの様子。そんなある日、重一郎は空に輝く光を見つけたことから不思議な世界へと導かれていく…。

『美しい星』感想評価

前半は感想評価、中盤以降は映画の解説(ネタバレ含む)をしていきます。

『美しい星』は1962年発表の三島由紀夫の異色SF小説を原作に、宇宙人を名乗る一家4人の行く末を描いたSFコメディ映画です。

三島由紀夫は一時期UFO研究会に属し、UFOを熱心に観測していたことでも知られています。そして彼は「空飛ぶ円盤」は一個の芸術上の観念だという結論に至り、『美しい星』を書きました。

吉田大八監督はこの小説を学生時代に読んで以来、ずっと映画化したいと考えていたそうです。設定も現代に置き換え、現代の核家族の姿を風刺した作品になっています。

三島文学は難解なイメージがありますが、この映画では大幅に脚色しコメディタッチに描かれているので、三島作品とは分離して考えてもらって大丈夫です。

そんな映画『美しい星』の感想は、前半はめちゃくちゃ面白くゲラゲラ笑ってしまいました。特にリリー・フランキーが変な決めポーズをするところは最高かよ!あと、橋本愛のUFOを呼ぶポーズも本当に可笑しい。自称宇宙人家族の滑稽な姿に大爆笑必至。

しかし後半はダレてしまって、退屈な映画に成り下がったという印象。かなりの異色作なので、不思議な世界観の紹介までは良かったけれど、そこから言葉での説明が増えてしまい、最後まで興味を引きつける要素に欠けてしまったことが残念です。

また、一家それぞれのストーリーが平行する構成ですが、長男より黒木(佐々木蔵之介)の方が目立っており、長男の存在が希薄で、成長がおざなりにされた感があります。

ですから前半はとても面白い、後半は退屈という極端な出来になっているという評価です。

そういうことで、ここからは映画『美しい星』の解説をしていこうと思います。



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『美しい星』ネタバレ解説

原作との違い

三島由紀夫の原作との違いを大まかに言うと、
・核問題→環境問題
・大杉家の職業の違い
・母(木星人)→地球人
・3人の敵宇宙人→黒木1人に集約

原作では冷戦時代の核の危機という非常に緊迫した時代背景があります。終末観が本当の現実になるんじゃないかと、みんなびびっていたんですね。アメリカとソ連が核戦争をマジでするんじゃないかって。

原作では、その切実な終末への論争が大きな軸となっています。重一郎と敵宇宙人たちの論争は、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の影響を受けており、小説ではとても重要な場面です。

映画ではその論争部分をクライマックスで描いています。テーマを環境問題に差し替えていますが、環境問題は切実な危機というより、人によって意見も分かれるところで、核よりはもっと緩やかな問題です。

ですから、人類を救うべきか滅ぼすべきかという黒木と重一郎の論争は、とても浮いていて支離滅裂な印象でした。あのシーンに説得力を持たせるなら、現在の日本にとって核危機の方がより身近で深刻なので、原作と同じで良かったんじゃないかと思います。もしくはごっそりカットするか。映画の重一郎は、特に反論もせずUFOに逃げてしまいました。

また黒木の「自然が美しいのではなく、自然を美しいと感じるんです。人間が」という哲学的問いには反論したいと思います。

というのも自然界には、黄金比やフィボナッチ数列(花びら等)が事実として存在する以上、自然界には一定の価値基準が始めからあるのです。そのことは、人間が美を作ったのではなく、美しさは法則として自然界に元々あるという証明になります(それを美と感じるかは人それぞれ)。

故に自然から生まれた人間がそれを美しいと感じるのは、至極当然のこと。ですから黒木の言葉を言い換えれば「自然は美しい。人間もまたそれを美しいと感じることができる」です。

大杉家

映画では父は火星人、長男は水星人、長女は金星人、母は地球人。なんで母だけ地球人かと言うと、映画のバランスとしてツッコミを入れたかったそうです。なにが金星人やねん!っていう。

小説の大杉家は、自分を宇宙人と信じた人間の物語です。三島由紀夫がそう言っています。つまり、たかが人間なのに宇宙人を語って地球を救うと言い出す、現実逃避的な姿の滑稽さを描いています。

映画の大杉家は、本当に宇宙人かもしれないという曖昧さを残しています。始めはバラバラだった家族が、宇宙人への覚醒を通して成長し、一致団結する姿が映画『美しい星』の醍醐味です。



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黒木は何者か?

政治家鷹森の第一秘書である黒木は一体何者だったんでしょう?本当に宇宙人だったのでしょうか?

答えは、黒木は大杉家の「葛藤」です。理想と現実の葛藤。

大杉家は宇宙人に目覚めてから、各自大きな使命を果たすんだという理想を抱きます。父は環境問題、長男は政治を変えること、長女は処女懐胎、母はマルチ商法でお金持ち。

しかし彼らの理想は、現実の前にもろくも崩れ去ります。父は病を持ち、長女は悪い男に騙され、母は詐欺られるという現実。現実逃避していた家族は、ようやく目が覚めます。

家族が現実を受け入れた時、黒木は消え去りました。葛藤は消えました。そこには初めて一致団結し、現実に向かっていく家族のたくましい姿がありました。

ボタンは何を意味するのか?

ボタンは重一郎の命のカウントダウンであると共に、地球滅亡のカウントダウンのメタファーです。監督から観客への問題提起だと思います。

ラストのUFOの意味は?

ラストは重一郎が、UFOから家族を見下ろしている姿で終わります。原作にはないシーンです。あれは重一郎の魂が故郷へ帰る姿。火星人が地球での役目を終え、火星へ帰ったんでしょう!笑。

そういったことで、『美しい星』は実にヘンテコで不思議な映画でした。あなたの周りにも自称宇宙人がいるかもしれませんね!この機会に映画と原作を読み比べてみてはいかがでしょうか。

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