「ファーナス/訣別の朝」感想と解説 貧困層から見たアメリカの風景


映画『ファーナス/訣別の朝』予告編映像

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作品情報

2013年アメリカ映画(原題:Out of the Furnace)。
監督・脚本は「クレイジー・ハート」のスコット・クーパー。製作にリドリー・スコット、レオナルド・ディカプリオ他。主演クリスチャン・ベール、共演ウッディ・ハレルソン、ケイシー・アフレック、フォレスト・ウィテカー、ウィレム・デフォー、ゾーイ・サルダナ、サム・シェパードなど豪華俳優陣を迎えたクライムドラマ。

「ファーナス/訣別の朝」あらすじ

米ペンシルバニアの田舎町を舞台に、地元の犯罪組織と関わってしまった弟を助けるため、兄が決死の覚悟で戦いを挑む姿を描いた。溶鉱炉(ファーナス)から絶えず白い煙がのぼる鉄鋼業の町ブラドック。年老いた父親の面倒を見ながら製鉄所で働くラッセルは、貧しいながらも恋人リナと過ごす時間にささやなか幸せを見出していた。しかし、イラク戦争で心に傷を負った帰還兵の弟ロドニーが、ある事件に関わったことから、ラッセルの運命は大きく変わってしまう・・・。

「ファーナス/訣別の朝」感想・評価・解説

映画「ファーナス/訣別の朝」にはアメリカの貧困という背景があります。

映像から伝わる空気は重々しく、空はいつもどんよりとしています。低所得で生活する町の人々の苦悩がにじみ出ているようでした。

アメリカではトランプ大統領が就任しましたが、ドナルド・トランプが勝った背景も「ファーナス」を観れば少しは理解できると思います。

ペンシルバニアの田舎町の製鉄所で働く主人公は、アメリカ社会によくいる白人貧困層のひとり。貧乏ながらも、家族を愛し恋人を愛し、必死に働く男の姿があります。

しかしある日、ちょっとした不注意で交通事故を起こしてしまい、刑務所に入ることになります。刑務所からでた彼の人生は、一変してしまいました。

恋人には去られ、病気の父は他界し、残ったのは弟ひとりだけでした。

弟役は2017年のアカデミー主演男優賞を獲得したケイシー・アフレックです。うつろな目とだるい喋り方と病的な感じが彼は似合いますよね。うつろな目は兄のベン・アフレックにそっくりです。

物語に戻りますが、その弟さえも、ある事件に巻き込まれてしまい、失ってしまいます。ついに、彼は全てを失ってしまいました。そして、彼のなかにある大きなふつふつとしたやるせない怒りが、最後に爆発してしまったように思えます。

元恋人との橋での別れのシーンは、あまりにも惨めで可哀想でした。彼の背中はアメリカの貧困層を代表しているように感じました。アメリカの大きな病を背負っているように見えました。アメリカの貧困層は、4600万人もいるそうです。私はこの映画から、とても深いアメリカの病んでいる姿を垣間見ました。

そして、ラスト。
田舎町のスクラップ置き場に響く銃声。
やるほうもやられるほうも、被害者なのか、加害者なのか。

彼のラストの表情は何を意味したのでしょうか。
成し遂げた達成感と絶望感、そんな表情にみえました。

少々ストーリー的には強引な場面もありましたが、なかなか考えさせてくれる映画でした。

「ファーナス/訣別の朝」は、クリスチャン・ベールの演技も素晴らしいので見て損はない映画だと思います。評価は70点。

『ファーナス/訣別の朝』DVD

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