「マンチェスター・バイ・ザ・シー」静けさの内の重厚な人間ドラマ

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」静けさの内の重厚な人間ドラマ


【作品情報】

2016年アメリカ映画。原題:Manchester by the Sea。
マット・デイモンがプロデューサーを務め、「ギャング・オブ・ニューヨーク」の脚本で知られるケネス・ロナーガンが監督・脚本の人間ドラマ。主演ケイシー・アフレック、共演ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ、カーラ・ヘイワード。2017年アカデミー賞で主演男優賞、脚本賞の2部門を受賞した。

【あらすじ】

リー・チャンドラーは短気な性格で血の気が多く一匹狼であった。彼はボストンの住宅街で便利屋として生計を立てていた。ある冬の日、リーは兄のジョーが心臓発作で亡くなったとの電話を受けた。地元に帰ったリーは、自分が16歳になるジョーの息子の後見人に選出されたことを知る。兄を失った悲しみや自分に甥が養育できるだろうかという不安に向き合うリーだったが、彼はそれ以上に重い問題を抱えていた。

【感想・評価・ネタバレあり】

一言でいうと、素晴らしい映画でした。
最初に題名をみたとき、これはイギリスのマンチェスターを舞台にした映画だと思っていましたが違いました。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」はボストン北東にあるマサチューセッツ州の漁港の町の名前です。美しい景観の町として知られています。実際の撮影もここで行われました。よって舞台はアメリカです。イギリスではありません。でも確かに、町の風景はイギリスの漁港っぽい雰囲気がありました。静かで美しい町だと思います。

リー役でケイシー・アフレックが今年のアカデミー主演男優賞を受賞しました。アカデミーだけでなくゴールデングローブをはじめ数々の賞を総ナメにしています。この役での演技が高く評価されました。

当初はこの役はマット・デイモンがする予定でしたが、親友のケイシーに譲りました。というのはケイシーは自身の監督映画「容疑者、ホアキン・フェニックス」で、ホアキンと共に1年がかりの嘘をついたため、業界から総バッシングをくらい、以来干されていました。そこで小さい頃から知っているケイシーの再起を図るため、マット・デイモンが役を譲ったようです。

実際に、この役はマット・デイモンではなく、ケイシー・アフレックが演じて大正解だったと思います。彼の静かな口調と憂鬱な表情は、リー・チャンドラーに見事にはまっています。最高の演技でした。

リーはボストンの郊外で、アパートの便利屋の仕事をしていて、人間関係を一切拒み、一人孤独に生きる男です。仕事後にバーに行っては、他の客に喧嘩をふっかける血の気の多い短気な性格の持ち主。

そんなリーの元へ兄ジョーの死が告げられます。地元であるマンチェスターに戻ったリーは、兄の息子の後見人になったことを知らされます。しかし彼は甥の後見人になることに気が進みません。物語は過去と現在を行ったり来たりする時系列で進行していきます。そこで徐々にリーの過去が明らかになっていきます。

彼はあまりにも大きな重責と悲しみを持つ人でした。それがあるため、どうしてもマンチェスターには住めないのです。しかし甥との交流を通じて、少しづつですが笑顔を取り戻していきます。

そして最後に選択した答えは、後見人にはならないことでした。彼の悲しみは深く、マンチェスターに住まないで後見人を譲ることを甥に告げます。

私はこの選択で良かったと思いました。リーにはリーの人生があり、甥には甥の人生がある。何かを無理して選択するより、両者にとって最善の選択をしたのではないでしょうか。

この映画、描き方がとても上手だなと思いました。
心に深い傷を持ちながらも、それでも日常を生きていかなければならない人々を淡々とカメラは追います。何か大袈裟に感傷にふけるシーンもありません。しかし人の持つ大きな悲しみが、静けさの中にも苦しいほど伝わってくるのです。ぼろぼろと泣いてしまうことを抑えれないかもしれません。

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」はケイシー・アフレックの見事な演技とともに、観ることを強くお勧めする映画です。2016年のベストムービーの1つであることに間違いはありません。

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」予告編映像

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