『ドリーム』ネタバレ感想評価と解説 NASAを陰で支えた黒人女性の奮闘!


映画『ドリーム』予告動画

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『ドリーム』作品情報

2016年アメリカ映画(原題:Hidden Figures)。
マーゴット・リー・シェッタリーのノンフィクション小説『Hidden Figures』を原作に、『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィが監督・脚本した伝記ドラマ。NASA職員の3人の黒人女性の活躍を描く。第89回(2017)アカデミー作品賞ノミネート。
出演タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、ジム・パーソンズ、マハーシャラ・アリ。

『ドリーム』あらすじ

アメリカ南部バージニア州のラングレー研究所(NASA)に計算係として勤めるキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー(ジャネール・モネイ)。米ソによる宇宙開発競争が熾烈を極める中、天才的な数学の才能を持つキャサリンは宇宙特別研究本部に配属されることになるが、そこは白人男性ばかりの過酷な環境だった…。

『ドリーム』感想評価

前半に感想評価、後半に時代背景の解説ネタバレ含む)をしていきます。

ドリーム』は1960年代のNASA(アメリカ航空宇宙局)を舞台に、そこで働く3人の黒人女性にスポットを当てた実話ベースの映画です。史実とは異なる部分が結構ありますが、アメリカでは評価も上々で、アカデミー作品賞にノミネートされました。

原題の「Hidden Figures」は「隠された人々」という意味。劇中で描かれた「マーキュリー計画」は映画化もされているくらいアメリカでは有名ですが、その成功を支えた黒人女性たちの存在は、殆ど知られていませんでした。

その隠の立役者であるマイノリティのヒロインたちが差別や偏見に立ち向かう物語というわけで、アメリカでは大ヒットを記録しています。特にアメリカを代表するNASAが舞台ということも人々の興味を駆り立てたのではないでしょうか。

そんな映画『ドリーム』の感想ですが、個人的にこの種の正統派ドラマは苦手です。TVドラマで十分な気がします。設定の時点でオチがわかるので、後はひたすら分かっているオチに向かって進行するのを観るのは、なかなか苦痛なものがあります。

ですが『ドリーム』は伝記映画なので、歴史を知る上では大変意義のあるものだと思います。黒人差別、キング牧師と公民権運動、人種隔離政策、女性差別などアメリカの黒歴史を勉強する映画と捉えれば、苦痛も耐えられるというものです。

丁度この頃は、黒人の人権運動が盛んになっていた時期なので、NASAではどんな動きが起きていたのかという勉強にもなりました。特にNASAの性質上、優秀な人間を差別とかしている場合じゃないので。

あとケビン・コスナーの大袈裟に振舞わない抑えた演技は素晴らしかったと思います。サラッとクールに親切を行うとこなんて、渋くてカッコ良かったです。

さてここからは、映画の理解を深めるために時代背景の解説と、キャラクター紹介をしていきたいと思います。



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『ドリーム』ネタバレ解説

マーキュリー計画

マーキュリー計画は1950年代から60年代にかけて行われたアメリカの有人宇宙飛行計画。

『ドリーム』で描かれたように1962年2月、ジョン・グレンがアメリカ合衆国初の地球周回飛行を達成しました。ジョン・グレンはこの計画に携わった7人の宇宙飛行士「マーキュリー・セブン」の一人です。映画『ライトスタッフ』で彼らの物語が描かれています。

計画実施の背景にはソ連との宇宙開発競争があります。

1957年にソ連が世界初の人工衛星打ち上げに成功してから、アメリカは常にソ連に一歩先をリードされていました。なので、ソ連より先に人間を宇宙へ送るぞ!という思惑がマーキュリー計画です。

しかし結局、有人宇宙飛行もソ連に先を越されました(ガガーリンがボストーク1号により人類初の有人宇宙飛行を達成)。そのすぐ後、ジョン・F・ケネディは月面着陸を目指すことを発表しアポロ計画へと繋がっていきます。

そんな人類史上スゴい計画に携わっていたのが、主人公キャサリン・ジョンソンを含む3人です。

人間コンピュータ

コンピュータ導入以前のNASAでは、全米から数学の得意な黒人女性達を集め、手動による計算を行っていました。だから主人公3人とも優秀なわけですね。彼女たちは「人間コンピュータ」と差別的に呼ばれていました。

西館と東館に分けられていたのは、黒人と白人のエリアを分けるためです。キャサリンがトイレを行ったり来たりしていたのは、そういう理由です。ただ、映画で描かれた1961年当時のNASAでは既に、差別的な設備は取り払われていたそうです。



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登場人物紹介


キャサリン・ゴーブル・ジョンソンはNASAの数学者。マーキュリー計画やアポロ計画などに携わり、ロケット軌道の計算や打上げウィンドウ、緊急時用の帰還パスの計算において多大なる貢献をしました。2015年、97歳にして大統領自由勲章(文民に贈られる最高位勲章)が授与されています。映画『ドリーム』の冒頭では、天才数学者にも関わらず「人間コンピュータ」室で手動計算の一員として雇われていたのが描かれています。その後才能が認められ、マーキュリー計画に抜擢されました。


ドロシー・ヴォーンは、NASAにおける黒人女性初のスーパーバイザー(管理職)。「人間コンピュータ」室の管理者であった彼女は、IBMコンピュータ導入により職を失う危機を感じ、コンピュータのプログラミング言語をいち早く学び、スタッフの女性達にも教える立場となりました。先見の明と努力によって地位を勝ち取った姿は、誰にとってもお手本となるでしょう。劇中ではプログラミングの本を探す為に図書館を訪れましたが、白人たちに邪険に扱われる様子が描かれています。


メアリー・ジャクソンは、アメリカ初の黒人女性航空エンジニア。1979年にラングレー研究所の女性プログラムマネージャーになり後進を育成し、全人種の女性の地位向上に貢献しました。始めは夫にも理解されなかった彼女が、強い意志により最終的に周囲の理解を勝ち取る
姿はとても素敵でした。彼女が裁判所で判事に語った「前例を作りましょう」のセリフは名言ですね。

まとめ

『ドリーム』で描かれた、女性たちが人生の障害に立ち向かいそれを克服する姿は、現代にも通じるものです。

この映画は人生の教科書のような映画と言ってもいいでしょう。子供にとっても人生のお手本になるような物語であり、家族で安心して観賞できる映画です。アメリカでは教師や親が子供たちを連れて『ドリーム』を観賞させたそうですよ。

是非ご家族一緒にご覧になって、勇気や励ましや教訓を受け取ってみてはいかがでしょうか。

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