『ハクソー・リッジ』ネタバレ感想と解説 戦場で起きた奇跡の実話


映画『ハクソー・リッジ』予告動画

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『ハクソー・リッジ』作品情報

2016年アメリカ映画(原題:Hacksaw Ridge)。
第二次世界大戦中、衛生兵として従軍したデズモンド・T・ドスの実体験を描いた戦争映画。
監督メル・ギブソン、キャストは『沈黙-サイレンス-』のアンドリュー・ガーフィールド、ヴィンス・ヴォーン、サム・ワーシントン、ヒューゴ・ウィーヴィング、テリーサ・パーマー、レイチェル・グリフィス、ルーク・ブレイシー。2017年アカデミー賞録音賞と編集賞を受賞。

『ハクソー・リッジ』あらすじ

第2次世界大戦中、デズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、人を殺してはならないという宗教的信念を持ちつつも、軍隊に入ることを志願する。しかし彼は軍での訓練中に武器に触れることさえも拒否したので、軍法会議にかけられてしまう。父(ヒューゴ・ウィーヴィング)の尽力により、奇跡的に除隊を免れたデズモンドは、武器を持たずに衛生兵として戦場に参加することを許可され、激戦地の沖縄に向かうのであった。

『ハクソー・リッジ』ネタバレ感想と解説

映画『ハクソー・リッジ』は、戦争で武器を持つことを拒否した兵士が、多くの兵士を救ったという嘘のような本当の話です。

映画で描かれるのは太平洋戦争時の沖縄戦で、「ハクソーリッジ(のこぎり崖)」とは、戦場だった沖縄にある前田高地のアメリカ側の呼称です。150mの断崖絶壁であることからこの名称がつけられました。

この戦場は大変な激戦地だったようです。映画でもその凄まじい戦闘の様子がリアルに描かれていて大変迫力がありました。『プライベートライアン』のようなリアルで悲惨な戦闘を観ることが出来ます。

物語はデズモンド・ドスという実在の人物の生い立ちから、結婚、戦場での活躍までを描いています。

『ハクソー・リッジ』の感想ですが、メル・ギブソンは正統的な映画を撮る監督なので、ただドスの半生を素直に追っているだけで、映画としての面白さはあまりありません。デズモンド・ドスの半生があまりにもドラマチックなので、その物語自体の面白さでもっている映画です。

デズモンド・ドスは母親の影響もあり、幼い頃からセブンスデー・アドベンチスト教会に通い、非暴力や安息日の厳守という強い宗教的信条のもとに成長しました。(セブンズデー・アドベンチストは戒律を重んじ、エレン・G・ホワイトという指導者の言葉を重視する教会なのでプロテスタント教会からはプロテスタントとして認められていない)

こういった良心に基づく信念によって兵役を拒否する人を良心的兵役拒否者といいます。

デズモンド・ドスは良心的兵役拒否者なので、戦争には参加するけど戦闘には参加せずに衛生兵として人々を助けるという立場を主張しました。

良心的兵役拒否者に対する偏見は強く、国によっては死刑になることもあります。デズモンドも映画にあるようにリンチされたり、軍によって妨害されたりします。

映画で少し違和感を感じたのは、良心的兵役拒否という信念はいいのですが、デズモンドの場合訓練で銃を持つことさえも拒否したので、それは信仰とは違う、彼のプライドや意固地な部分であります。そのことは妻にも咎められたのですが、彼は奇跡的にも軍によって認められ、戦争に参加するようになります。

武器携帯を拒否する者を戦争に参加させる判断は、当時としてはかなり画期的だったんじゃないでしょうか。

映画では沖縄戦しか描かれていませんが、彼はグアムやフィリピンでも戦闘に参加し、負傷者を救出し、ブロンズスターメダルを受章しています。

沖縄戦では映画にあるとおり、自分の隊が撤退した後でひとり前線に残り、負傷兵を救出しつづけました。武器を持たずに。なんという人だろうと思います。

デズモンドは1人救うと「もうひとり救わせてください」と神に祈り、またひとり救うと「もう一人救わせてください」と繰り返し、最終的に75人も救いました。彼は武器を持っていません。本当に奇跡としか言いようがありません。

その時のデズモンドには、神が守ってくれるので絶対に死なない、という強い確信があったと思います。そうでなければ危険な前線で、武器も持たずに、いったい誰がそのような行為をできるでしょうか。

彼の何かを信じる心は、戦場を動かし、人を動かし、軍を動かし、国までも動かしました。ゆえにデズモンド・ドスはその功績が認められ、良心的兵役拒否者として初めての名誉勲章(最高位の勲章)受賞者となりました。『ハクソー・リッジ』は、そんな男の奇跡の実話です。

映画の出来としては正直にいうとイマイチですが、デズモンド・ドスという人間がいたことと、信じる心は山をも動かすということを知る意味では、大変に有意義な映画だと思います。

また、戦わない兵士が活躍する戦争映画は初めてなんじゃないでしょうか。そういう意味でも『ハクソー・リッジ』は戦争映画を根底からくつがえした作品であると思います。戦うんじゃない、救うんだ、と。

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